私は、2019年2月から2019年6月まで中国の復旦大学に大学間交換留学制度を利用し、留学しました。私を留学に突き動かしたのは「法学を通してその国の価値観の違いを知りたい」という思いです。大学で法学を学ぶうちに、法学という科目はその国の人々の考え方を形作るうえで非常に重要な役割を果たしているのではないかと感じるようになりました。自分の専門科目の勉強を通して、その国の価値観を知ることができるのは、大学生活で留学するしかないと考え、留学することを決めました。
留学先では、民法や行政法などの法律の基礎科目を中心に履修しました。日本の大学で日本法の基礎を学んでいたことで、中国で中国法を学ぶ際にも両者の相違に着目して学習を進めることができました。日本法と中国法の間には共通した部分が多いと感じましたが、そもそもの政治体制や価値観の違いが法律間の相違点として表れている部分もありました。授業は日本と同じく講義形式が主でしたが、同じ授業をとっている現地の学生に助けてもらいつつ、勉学に励むことができました。
授業以外でも、中国人学生と日本人留学生により構成される刑法の自主ゼミにも参加しました。印象深かった回としては、「QRコードの張替え」という論点で、店にあるQRコードを勝手に貼り換え、別の者が支払いを受けてしまう行為について、詐欺罪と窃盗罪のどちらが成立するかという議論をしました。これは中国で実際にあった事件なのですが、日本もスマホ決済を積極的に導入しようとしている現在、一歩先にスマホ決済の普及が進んでいる中国でこのような生の事例に触れることはとても大切であり、貴重な体験でもありました。
私は2018年9月から、デンマークの首都コペンハーゲンで留学生活を送りました。空が広く、公園には芝生が広がり、池では白鳥が泳いでいて、低層でカラフルな建物の横の道を老若男女が自転車に乗って行き交う、首都なのがウソなようなそんな可愛い都市でした。大学や学校の外で国籍を問わず刺激を与え合える友人たちに恵まれ、彼らと一緒に過ごしたり話したりする中で新しい価値観を知ったり、自分や日本のことをもっと考えるようになったり、デンマークの「福祉国家」と言われる社会がどう成り立っているのかを学んだり、肌で感じたりすることがとても楽しくワクワクし、あっという間に過ぎた10か月間でした。
大学では政治学を主に専攻し、国やEU内の環境政策や消費者教育について学びたいと思って留学を開始しました。しかし、デンマークを知れば知るほど、その社会の全ての根底にきちんと存在しているデモクラシーに気づき、興味がそこへと移っていきました。デンマーク人に限らず、何気ない友人との会話から政治の話へ発展すること、政治参加や何を消費するかなど日々の生活の仕方に市民としての責任感を持っている姿、意見を言えること、政府と国民のオープンな関係性、5-6月に行われたEU選挙と国政選挙期間の街や人の様子、政治家と人々との近さ、そして80%を超える投票率。「民主主義ってなんなんだろう、西洋諸国とは歴史や慣習の違う日本で民主主義を成り立たせるとはどういうことなんだろう」と考え続けました。これは、残りの学生生活の中でも深めたいトピックのひとつです。
自分が社会や学校の少数派として生活することや、自分にとっての当たり前が当たり前ではない環境に身を置くこと、多様なバックグラウンドを持つ学生や社会人と出会い、学び合い、自分の考えを巡らせることができたことは自分にとって貴重な財産になりました。留学は自分の力だけでは実現できませんでした。大学の留学システムや奨学金の支援、両親の理解と支援、他にも多くの人に支えられて実現できたことだと思っています。感謝するとともに、これから自分にできる形の恩返しをしていきたいです。