①現在の経済・経営環境として、法制度の枠組みや条文の解釈など、これまでの法規制について明らかにすることに加えて、これらの環境は常に変化するため、今後の動向をにらんだ仕組みを構築することが必要となります。

 ②もう一つの柱として、その副題となっている「会社法務にとって、ロースクール修了生は即戦力となるか?」があります。すなわち、法制度の整備とルールの明確化(規範の定立)という側面とは別に、その実施主体は誰であるのか(行政・司法および企業・国民一般)、その担い手はどこから調達するか(人材の育成)も問題となります。

 法科大学院を取り巻く環境は年々厳しくなっています。法科大学院制度の設計時に目標とされた3,000人程度の新司法試験(以下、「司法試験」)合格者は、現在、2,000人程度にとどまっており、弁護士の需要や法曹有資格者の活動領域についても、その見通しの甘さが明らかになりました。
 しかも、関係者により新たな就業分野を開拓できなかったこともあり、全国の法科大学院への入学志願者は年々減少しています。平成25年度の志願者数は、法科大学院制度が発足した当初の19%まで激減しました。
 もちろん、その背景には、多様な法曹人材養成という理念が、およそ現実を踏まえたものでなく、もっぱら司法試験合格者数の多寡が重視される中で、公的支援制度も定員充足率や司法試験の合格率に応じて削減されるなど、法学未修者や社会人の志願者が不安を感じる実情があるからです。
 しかも、一般企業の法務担当者から、平均的なロースクール学生は、社会人としての経験が不足しており、資質・能力にも問題があるという声さえあります。インハウスローヤーの需要も、それほど大きくなっていない以上、今後は企業法務に向けた職域拡大が、法科大学院の行く末を左右するでしょう。


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