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研究会概要

■ 第3回科研研究会概要  2006.10.03

2006年10月3日(火)18時15分から20時15分まで、大阪大学大学院法学研究科中会議室(法・経総合研究棟4F)にて、科研費基盤研究(B)「紛争回避と法化の法理論的・実証的検討」研究会を開催しました。というのも、本科研費で実施した箕面市での職場トラブル対処方法に関するアンケート調査のデータ検討がある程度進んできたので、その成果を科研費の研究分担者と共有し、今年度末までに執筆しなければならない科研費成果報告書の執筆分担を決めたかったからです。  報告は、私が調査の概要について説明し、続いて渡邊太(本学特任研究員)さんが調査データの単純集計、クロス分析、相関分析、ニード・スコア分析、主成分分析について解説し、最後に私が分析成果に基づいて、研究分担者の報告書執筆分担を提案しました(調査概要およびニード・スコア分析以降の資料は福井祐介氏[西日本短期大学非常勤講師]の作成によるものでした)。興味深い分析結果は、女性は男性に比べて家族・親族、友人・知人、職場の同僚に相談することが多く、それはいじめや険悪な人間関係のような「人間関係型」の職場トラブルの場合に顕著であること、逆に、男性は上司や組織外の専門家に相談するものの、家族・親族、友人・知人、職場の同僚などには相談しにくいということ、険悪な人間関係に巻き込まれている人は、いじめや労働条件切り下げ、適性を無視した仕事割り当てといった別のトラブルに巻き込まれていることが多いこと、相談先についてのニード・スコアは上司、家族・親族、友人が顕著に高いが、男女を分けてみると、男性の場合には上司の数値が最高だけれど、女性の場合には家族・親族、友人・知人が上司の上位に来るということなどです。成分分析についても、おおむね常識にかなう相談先が同一性格の相談先としてまとまりを示していましたが、トラブルの種類に応じて直属の上司、職場の同僚の位置づけが微妙に動くところは面白いところでした。

ディスカッションでは、本調査が「実際の経験」ではなく、「職場トラブルに遭遇したらどうするか」という仮定形の質問をベースにしていることに注意すべきだということ、家族・親族、友人・知人へのニード・スコアが比較的に高く、裁判所や外部の専門家などのニード・スコアが低いといっても、それは回答者の想像にすぎず、実際にトラブルに遭遇したときにそのように行動するかどうか分からないということ、制度的−非制度的、組織内−組織外という座標軸に基づいて相談行動を分析しているが、それらはすべて相関するのであり、それぞれを区切って説明を求めるのはいかがなものかといったことが指摘され、有意義でした。こうした議論は報告書の執筆に当然反映されるものと期待しています。  なお、11月3日(金・祝)の13時から、大阪大学大学院法学研究科大会議室(法・経総合研究棟4F)にて、LP(Legal Profession)研究会および日本法社会学会関西支部研究会との共催の研究会で、本調査についての報告を行います。

報告: 「人は職場トラブルに遭ったときどのように行動するのか―職場トラブル対処方法に関する箕面市アンケート調査の結果から分かること―」
  @ 福井康太(大阪大学)「共同研究の趣旨説明」
  A 渡邊太(大阪大学)「単純集計 ・ クロス集計」
  B 福井祐介(西日本短期大学)「ニード・スコア分析 ・ 成分分析」
  C 福井康太(大阪大学)「制度設計への示唆」
 *コメント:矢原隆行(広島国際大学)、花野裕康(宇部フロンティア大学)
今回の研究会の成果を生かして、11月3日の研究会の議論を盛り上げていきたいと考えております。