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研究会概要

■ 第2回科研研究会概要  2004.10.30

2004年10月30日(土)に、元労働省女性局長で大阪大学大学院法学研究科法政実務連携センター招へい教授の藤井龍子先生をお招きしての研究会を開催させて頂きました。藤井先生のご報告は、詳細なデータに裏付けられた大変に密度の濃いもので、私どもの小さな研究会には過分な示唆をいただけたと、大変感謝しているところです。 

藤井先生の基調報告は、企業内外の個別労働紛争処理の現状から、平成13年10月の個別労働紛争解決促進法施行以降における都道府県労働局の個別労働紛争処理制度の状況(とりわけ大阪労働局の特殊な状況)、都道府県の労政・労働事務所の個別労働紛争処理制度の状況、地方労働委員会におけるそれ、さらに司法機関におけるそれ、加えて、セクシャル・ハラスメントの法制化の経緯からその概要、紛争処理制度との関わりといったところ、たいへん多岐にわたり、しかもそのそれぞれについて最新のデータが付されていて大変に説得的で示唆を得るところ大でした。

私にとって特に得るところが大きかったことは、まず、職場における苦情のうち、人間関係に関わること、とりわけメンタルヘルスに関わりをもつ問題について、国が「労働安全衛生」のスキームで検討を始めているということが確認できたことです。この科研費のプロジェクトが、労働安全衛生法第3条にいう「快適な職場環境」に、「良好な人間関係」といった、物的環境とは異なる要素を含めて考えようという方向で検討を進めているのが、あながち間違いではないことが確認でき、大変に力づけられました。今後、「新しい職場リスク」といわれるメンタルヘルスに関するトラブルやいじめ・嫌がらせといったトラブルが職場の安全衛生の圏域で議論されるとすれば、本研究がそれに対する一貢献となりうるという確信を深めています。

そのほか、それぞれの苦情処理機関の情報の共有をはかり、それを個々の企業や他の紛争処理機関に還元し、社会全体で、苦情処理キャパシティーを高めていこうとする方向についても示唆を得ました。私自身がそのような方向でADRの役割の活性化を理論付けていこうとしていたところだったので、ここでも大いに力づけられているしだいです。

藤井先生の基調報告のあと、お弁当を食べながらのランチセミナーも楽しく、さらに、松本和彦教授(憲法・環境法)による、大阪大学セクシャル・ハラスメント相談体制についての報告も、藤井先生のご報告をさらに具体的に掘り下げることになり、大変興味深くうかがわせていただきました。さらにご報告いただいた弟の福井祐介さん、いろいろ発言し、ディスカッションを大いに盛り上げてくれた参加者のみなさん、本当にありがとうございました。

最後に、すばらしい示唆に富む報告をいただいた藤井龍子先生に、重ねて心から感謝をささげたいと思います。今後とも、なにとぞご指導・ご鞭撻よろしくお願いいたします。