大阪外国語大学・200年度特別研究(2)プロジェクト報告書
2007/9/23
本プロジェクトでは、政治学、経済学、歴史学、社会人類学等の観点から地域としての「中国」、および東アジア(東南アジアを含む)をとらえ、中国地域研究の新たな方向性を模索することを目的とし、5つの共通課題を設定した。
この共通課題に即して、本学教員5名、本学OBなど14名、大学院生4名、南開大学関係者21名、台湾東華大学関係者6名による南開大学、東華大学(台湾)、本学共催の国際シンポジウムを南開大学歴史学院において開催するとともに(8月26日から30日)、将来的な研究成果の出版を念頭におきつつ、研究成果を報告書(添付資料 要返却)としてとりまとめた(8月)。また、シンポジムに
先立つ7月には、日本側の参加者によるセミナーを行い、あらかじめ全体テーマに関する調整を行った。
シンポジウムでは、中国、台湾の研究者、日本の中国研究者、東南アジア研究者、南アジア研究者、アメリカ外交史の研究者が、それぞれの視点から、議論をおこなうことで、それぞれの視点の違いを明確に意識することができた。台湾の中国研究者の報告には、海外との関係から中国の姿をとらえようとする姿勢と社会史的な関心を見出せ、前者からは、台湾研究者がいかに「中国」を特殊な研究対象として認知しているかをうかがい知ることができる。一方、中国の研究者には、むしろ、環境問題や格差といった現代の中国が直面している諸問題に関連した問題意識を発見することができる。日本の研究者は、「周縁」という視点を非常に強く打ち出している。しかし、相対化を試みるならば、こうした傾向は、知らず知らずのうちに地理的、空間的認識の比喩のなかに現象を一面的にとらえてしまう危険性を潜ませんているとも言えよう。シンポジウムのもう一つの大きな特徴は、いくつかの報告が、味覚や薬、身体といったこれまで中国地域研究があまり関心の払われてこなかった問題をとりあげている点にある。こうした試みは、歴史や人類学における主体性が、個々の人間から、人間どうしをつなぐモノや身体にシフトさせようとするものであり、今後の展開が期待される。
研究課題に関する特徴の他に、本シンポジウムは、大学教員に加えて3大学の大学院生、ポストドクターの研究報告の場を提供し、教育上の効果をあげることもできた。
本プロジェクトの研究成果は、10月末をめどに加筆修正を行った上で、本年度中に刊行物として公表する予定である。