関西大学『図書館フォーラム』第3号(1998年)10-14頁

インターネットによる法情報検索
−アメリカ法を素材として−

田中規久雄・福島力洋

はじめに
 よく「〜の情報をインターネットで調べたいんですけど」という質問をされることが多く、過大な期待がなされているようなので、最初にインターネットについて一言だけ述べておきたい。
 インターネットとは計算機がネットワークで相互に接続されている「状態」の一形態であって、クローズドなパソコン通信のような形態をもつものではない*1。もっとも最近はパソコン通信もインターネットの中に入ってきているが、そうした大きなサイトの計算機も電話回線を通じてインターネットに仲間入りしている個人の計算機も、一国の政府が運用しているサイトも個人が趣味で開いているサイトも、(システム上は)対等な立場にあり、同一の価値を有しうるというのが、インターネットの特質なのである。
 というようなわけであるから、インターネットで情報発信をしている個々のサイトが、如何なる運用形態をとるかについては自由度が高く、たとえば有料であるか無料であるか、会員制か公開かはもちろん、どのような情報を提供するかはすべてサプライ・サイドで決定される。つまり、有料サイトに対する支払者といったサプライ・サイドの立場にない者にとって、インターネットからの情報は原則的に「恩恵」であるということを念頭に置いていただきたい。「インターネット接続でLEXISを検索してください。」というのはおさらく冒頭の質問の答にならないであろうと推察するからである。
 とはいえ、ここで対象とする無料でオープンな情報に限っても、インターネットがその宝庫の一つであることにはまず異論がないであろう。以下、アメリカ法を素材として、その一端をご紹介したい。(なお、まずネットワーク上のエチケットについて、一通りの常識を知ることも重要であろう*2。)

1 インターネットとリーガル・リサーチ
 まず、インターネットでリーガル・リサーチそのものの情報や教材を得ることができる。たとえば、出版社を見れば、National Reporter Systemといった判例集にはどのようなものがあるのかとか*3、Shepardizingとはどのようなことなのかが書いてあったり*4、Law Schoolの講義録の中に判例の引用法*5があったりする*6
 また、Law Schoolが連邦最高裁判例や連邦法の一部を検索可能な形で提供していたり*7、連邦下院が連邦法や州法を収集したりしている*8。最近では、Law Reviewについても徐々に整備が進んでいるし*9、記事を検索出力できる一般誌も現れている*10
 もちろんインターネットを利用したリーガル・リサーチ教育についてのページもあり*11、わが国でもインターネットを意識したリーガル・リサーチ教育がなされ始めている*12

2 法情報検索の実際
 次に、実際の法情報検索についてみてみたい。
(1)リンク集による情報収集
 リンク集とは、なんらかのテーマごとにインターネット上のURLをリストにしているページで、外国法一般*13からアメリカ法に特化したもの*14まで、様々なものがある。
 リンク集による検索の長所は、専門家が集めていることが多く、つけられた表題を見ることによってどのような情報があるのか大体見当がつくという点である。短所はどうしてもリストが長くなり、同種情報の重複が増えたりすることである。ことにリンク集の中にリンク集が入っていたりすると、ややこしくなってしまう。また、膨大なサイトが次々生成消滅しているインターネットでは、ある程度の範囲を対象とするリンク集を常にup-to-dateなものにすることは至難の業であり、ことに個人の努力ではどうしようもないところに来ている。
(2)ナビゲーターによる情報収集
 ナビゲーターも一種のリンク集であるともいえるが、分野別の整理が階層化され行き届いており、初心者にはどのような分野があるのかを知ることも含め、有益な点がある。また、最近ではそのサイト内の検索を含めたナビゲーターとなっていることが多く*15、便利である。
(3)検索エンジンによる情報収集
 以上の、何らかの形で人為が入った検索手段は、1)リンク集やナビゲーターを作ってくれていなければならない、2)あちこちにあるリンク集のURLを知っていなければならないという点で、それらへのリンク集を自分で作っておくなど、ある程度のコンピュータ・リテラシーと努力が必要であった。
 しかし、自動で事前にインターネット・サイトを検索し、そのページを解析してデータベースを構築するという検索エンジンの発展が、インターネットにおける法情報検索の新たなパラダイムを提供した*16。また、検索エンジンを有するような大規模なサイトは数が少なく、最初に知っておくべきURLが数個ですむという点も負担を軽減している。
 以下、実例として、「インターネット上の言論の自由(Freedom of Speech, Free Speech)と合衆国連邦最高裁」について、見るべき特定のサイトを全く知らないということを前提に、検索エンジン*17を利用して情報入手してみたいと思う。
 接続すると、検索語入力ボックスが現れる。



 「+internet +"free speech" +"supreme court"」と入力し*18、Submitボタンを押す。しばらくすると検索結果が画面に表示される。



 この段階で希望する情報がなさそうな場合は、検索画面に戻って検索語を変えてやり直すが、ここでは、候補番号1番に、"Supreme Court upholds Free Speech on the Internet"とあるので、この情報を具体的に見ることにする。リンクの部分をクリックすると当該画面に移動することができる。



 この画面を読んでみると、どうやら、インターネット上の表現の自由に関して最高裁がReno v. ACLUという名前の判決を下したようだということがわかる。その下には、"SEE FULL TEXT OF RULING"とあるので、判決文へリンクしていることがわかる。そこへ進むと、"Supreme Court Decision Index"というタイトルの画面が現れる。



 Syllabus、Opinion、Concurrence(シラバス、法廷意見、同意意見)のそれぞれへのリンクが張られているが、ここではとりあえず事件の概要を知るために、シラバスを見てみる。移動するとシラバスが出てくる。



 少し読んでみると、どうやら"Communications Decency Act of 1996"が問題となっているようなので、この法律が一体どういうものだったのか、もう少し調べることにする。
 この場合、"Communications Decency Act"をキーワードとしてもう一度検索を行えばよい。先ほどと同様に検索を行うと、下図のような検索結果が返ってくる。



 たとえば"1. Text of the Communications Decency Act"のリンクをたどると、同法の全文を見ることができる*19
 以上、特定のテーマについての「能動的」情報収集法を説明したが、「受動的」情報収集法についても触れておく。たとえば、コーネル大学が行っている、LII BulletinおよびLII Bulletin-nyというサービスでは、それぞれ、連邦最高裁の判決リリース後数時間内にそのシラバスを、ニューヨーク州最高裁判所(Court of Appeals)の重要な判決についてはその要約と分析を、電子メールで送ってくれ、連邦およびニューヨーク州の最新判例のフォローアップに大変有用である*20
 こうした検索エンジンの利用では、検索語の選び方がスキルとして必要になる。これがうまくないと、必要情報を取り逃がし、かつノイズ(無駄情報)の洪水の中で溺れることになる。たとえば、上記の実例で、freedom of speech のみで検索するとfree speechはかかってこない。また、speechのみではノイズが増えすぎるといったことが起こりうる。というわけで、実例では、free speechとsupreme court(最高裁)のANDで検索し、絞り込んだわけである。このように、求める情報自体をしっかりと把握し、複数の座標軸でその情報を位置づけられないといけないのである。つまり、その事柄に関して事前に可能な限り研究しておく必要があるわけで、事前知識なしにとりあえずインターネットというのでは無駄な労力を使い、疲弊するだけという結果にもなりかねない場合もあるものと思われる。
(4)書誌検索
 最後に書誌検索をとりだして触れておきたい。上述のように若干のLaw Reviewが書誌検索・記事出力を許しているほか、雑誌記事の有料デリバリーを行っているサイトでも記事検索の段階までは無料だったり*21するほか、各書店等で注文受付用に運用しているページも書誌検索に役立つ場合がある。
 ここでもとりあえずの例として、Amazon.com*22という書店のデータベースを利用し、表現の自由についての書誌検索を行ってみることにする。ホームページからSearchのリンクをたどると、下図のような検索語入力画面になる。



 たとえば、Titleの欄に"freedom of speech"と入力してみると、下図のような検索結果が得られる。



 リンク先にはさらに詳細の情報を得ることができる。



 書店のデータベースを書誌検索に利用するメリットは、書店にもよるが、一つには、最新の出版情報が反映されているということにある。発売前のものですらデータベースに登録されている場合もある。このとき、書店によっては、データベースを在庫と連動させている場合もあるので、検索中のデータベースがどういう性格のものかを見極める必要がある。また、欲しい書籍が見つかった場合に、その場で注文できるというのも一つのメリットである。さらには、アメリカでは再販制度が当然違法とされているので、割引価格で販売されていることもあり、うまく探せばかなり安く買える可能性もある*23
 書店から、受動的に、新着情報を得ることもできる。たとえば、これもAmazon.comのサービスだが、Eyesと呼ばれるものがある。このサービスは、予め登録しておいたテーマや著者名等に該当する新着図書があれば、それについて電子メールで知らせてくれるというものである*24。活用次第では、自らの関心事項についてのフォローが容易になるものと思われる。

3 留意事項
 次に留意しておいた方がよいと思われる点について若干補足しておきたい。
(1)時間の問題
 まず第一は、インターネットからの電子情報の入手の際の時間的問題である。
 インターネットの電子情報は確かに郵便による送付などに比較すれば早いとはいえるのだが、ネットワークのトラフィックや関係サーバーのダウンなど、常に何かのトラブルが内包されていると考えておいた方がよく、実際ワーキング・タイムには実用に耐えない程遅いことがある。
 これを緩和するのに、いわゆる自動巡回ソフトや自動ダウンロード・ソフトを利用することが有用な場合がある。つまり、求めるURLにあたりをつけたら、ソフトを仕掛けておき、必要な部分を、たとえば夜間などに取ってこさせるのである*25。少しやってみて遅いと感じた場合は、これを利用し、次の仕事に取りかかった方が有益であろう。
(2)権威の問題
 第二は引用を中心とする権威の問題である。
 インターネット上の電子情報は原則的に「第一次的権威(Primary Authority)」ではない。現時点では、未だ多くは紙情報である原本などの「第一次的権威」にあたる必要がある。たとえば、引用なども「第一次的権威」によらなければ論文や研究自体の価値が低く評価される。
 インターネット情報はリーガル・リサーチ上は「検索書」にあたることが多い。ただ、図書館などに行かなくても手軽にできることや、とりあえず原資料と推定されるものが入手できる点にメリットがある。
 また、あるサーバー上にしかない情報などについては、URLが第一次的権威となるほかないし、たとえば、権威ある判例集が公刊されるまでは、U.S. Law Weekからの引用が認められるなどの点から考えて、ともあれ執筆時点でどこかのあるサーバーにしかない電子情報についてはその第一次的権威が限定的であるにしろ認められてしかるべきであろう。

まとめ
 インターネットの文化は、組織か個人か、また大きいか小さいかに関係なく、誰もが情報の受領と発信ができるという情報の「交換」に価値があるのであり、それが平等な情報社会の基盤なのであるから、一方的に情報供与を受けるだけの場合もそのことは頭の隅にとどめおく必要がある。インターネットに欲しい情報が無償であれば幸運を感謝すべきであり、不満ならLEXISやWEST LAWといった有料の商用データベースを使うべきであろう。
 しかし、最新の情報が入手できる場合があることや、教育用の資料など原典の厳格性があまり要求されない場合はインターネット情報は簡便かつ効率的な情報源であり、逆に、そうした速報性の面や教育利用の面がもっと活用されるべきことが望まれる。

(注)
*1 片岡昇,山下一美「インターネット−扉を開ければ世界が見える−」[
http://www.ipcku.kansai-u.ac.jp/~kataoka/internet.html]。 片岡昇「簡単・便利インターネット」[http://www.ipcku.kansai-u.ac.jp/~kataoka/sld001.htm]。
*2 片岡昇「ネットワーク初心者のためのネチケット入門」[http://www.ipcku.kansai-u.ac.jp/~kataoka/netiquette/]。
*3 たとえば、West社[http://www.westpub.com/]。
*4 たとえば、Sabina Assar, SHEPARDIZING IS A PROFESSIONAL RESPONSIBILITY!!. や、State of California vs. O.J. Simpson Tuesday, September 5, 1995 Hearing held at 1:03 p.m.を例にした解説など[http://www.shepards.com/]。
*5 Peter W. Martin, Introduction to Basic Legal Citation (1997-98 ed.)[http://www.law.cornell.edu/citation/citation.table.html].
*6 また、有料ではあるが実際にAuthorityやShepard'sの検索がWWWクライアント上から可能なサイトもある。MATTHEW BENDER[http://www.bender.com/].
*7 The Legal Information Institute, the Cornell Law School[http://www.law.cornell.edu].
*8 The U.S. House of Representatives, Internet Law Library[http://law.house.gov/].
*9 たとえば、University Law Review Project[http://www.lawreview.org/]。
*10 たとえば、タイム誌他[http://www.pathfinder.com/]。
*11 たとえば、The University of Houston Law Center and Law Libraries[http://www.law.uh.edu/guides/]。
*12 芹澤英明/英米法の部屋[http://www.law.tohoku.ac.jp/~serizawa/angloam.html]、参照。
*13 大阪大学法学部「法情報パッケージ」プロジェクト【インターネット法情報入門[暫定版]】[http://www.law.osaka-u.ac.jp/~kikuo/pack.html]。
*14 東北大学「WWWアメリカ法関係のWebページ」[http://www.law.tohoku.ac.jp/uslaw-j.html]。
*15 たとえば、YAHOO![http://www.yahoo.com/Government/Law/]。
*16 一般的解説として、藤田弘「インターネット上のサーチエンジンについて」[http://www.library.osaka-u.ac.jp/kanpo/fujita.htm]。
*17 例として、ALTAVISTA[http://www.altavista.digital.com/]を使うが、他にも、INFOSEEK[http://www.infoseek.com/]などがある。法律系専門のところとしては、FINDLAW[http://www.findlaw.com/]が有益である。
*18 ALTAVISTAの場合、「+」は論理積、引用符は連語を明示するためのもの。ちなみに、AとBの2語でAND検索する場合、A AND B, A & B, A + B, A B 等々、また、free speechを一語扱いにするには、free+speechとせねばならない等、そのサーチ・エンジンごとに表現法が違うので、最初に使い方を見ておいた方がよい。
*19 なお検索エンジンのデータベースは随時更新されており、今回ここで挙げた検索結果等はあくまでも今回の検索実行時点のものに過ぎないことには留意されたい。
*20 加入申込等は、http://www.law.cornell.edu/focus/bulletins.html、参照。
*21 UNCOVER[http://uncweb.carl.org/].なお、使い方の実例について、山崎隆史「情報ツールとしてのインターネット」[http://www.library.osaka-u.ac.jp/kanpo/inetdb.htm]、参照。
*22 Amazon.com[http://www.amazon.com/].なお、日本語ページが、http://www.amazon.com/jp/にある。
*23 ただし、最近、国内の取次店においても割引販売等が行われるようになり、かつてのように直接購入=安いという方程式は現在においては必ずしも成立せず、また、トラブルの際の処理などを考えると、慎重な考慮が必要である。
*24 登録等はhttp://www.amazon.com/exec/obidos/subst/eyes/eyes.html、参照。
*25 ただし、検索のためにCGIやSSIなどといったプログラムが動いて出てくるページにはまず使えない。

(たなかきくお 大阪大学法学部講師)
(ふくしまりきひろ 大阪大学大学院法学研究科)

-----------------------

(HTML版追記)
注におけるURLの表記は執筆当時のものであるが、CD-ROM収録時においてアドレスに変更があるものについては、変更後のものをハイパーリンクとして指定してある。ただし、元原稿との同一性を保つため、画面表示上の修正は加えていない。なお、本稿の元となった講演のレジュメも参照のこと