法学研究科(田中仁,高田篤,高橋慶吉,坂口一成),文学研究科(片山剛,堤一昭,田口宏二朗),経済学研究科(許衛東),国際公共政策研究科(竹内俊隆,山田康博),人間科学研究科(三好恵真子,木村自),言語文化研究科(青野繁治,林初梅),グローバルコラボレーションセンター(宮原曉,思沁夫,福田州平)
21世紀,中国の急速な経済発展によるグローバル大国化は,東アジアのみならず国際政治における新たなファクターとして緊要な位置を占めつつある。その一方で,近30年来質量ともに拡大・深化した日中関係は,昨秋の尖閣国有化に起因する反日デモを契機に深刻な転機にさしかかっている。本企画は,非対称戦争とテロリズム,新型伝染病と衛生問題,環境問題や核管理,国境紛争と歴史問題,あるいは少子高齢化と社会保障など,21世紀的課題群と中国の関係に着目し,歴史学を機軸とする中国地域研究を展開することによって,大阪大学における「対話型」研究プラットフォームの構築をめざす。
提案代表者ならびに本企画への参画研究者のほとんどは,現代中国研究にかかわる部局横断的プラットフォームである大阪大学中国文化フォーラムを組織し,上記「現代“中国”の社会変容と東アジアの新環境」「グローバル大国・中国の出現と東アジア:学校間交流による学際的研究」の研究プロジェクトを中心に共同研究を進めてきた。
本企画は,①東アジア大学間交流(歴史学の総合性と地域研究の学際性の対話),②部局横断的研究と教育(中国地域研究,大学院高度副プログラム「現代中国研究」),③サイバー空間上のワークショップシステムの構築(ディスカッションペーパーとブックレット刊行),④大学院生ら若手研究者の交流の場の提供という中国文化フォーラムのこれまでの活動をふまえて,新たな課題「東アジアの知的インフラ構築をめざす中国地域研究の新たな拠点創生」を展望する。
主たる論点は,以下のとおりである。
第一に,歴史学を機軸とする総合化によって,地域研究の学際性を実現する。地域研究の学際性は人類学あるいは国際関係論を軸に具体化されることが多いが,ここでは,歴史学の刷新(社会科学と人文学の「対話」)と今日的課題としての歴史認識の重要性をふまえながら,東アジアの知的インフラとしての対話空間の構築をめざす。
第二に,バイリンガル,マルチリンガルな対話空間の重要性である。「日本」で行う「中国」地域研究において,日本語・中国語と英語とともに,両者が共存する場としての「東アジア」を構成する言語空間を構想する必要がある。
第三に,有意な文理融合プロジェクトの構想と具体化である。本企画では,中国地域研究における文理融合の課題を,歴史学を機軸とする地域研究の総合化(課題群の整序と認識枠組の再検討)にあたっての不可欠の一部と位置づけ,その具体化と展開を図る。
大阪大学を東アジアの知的インフラ構築をめざす中国地域研究の新たな拠点として創生する。「バイリンガル,マルチリンガルな対話空間」の構築,ならびに有意な文理融合プロジェクト構想の具体化は,本学の特色と優位性(理系の重みと外国語学部)ふまえた課題設定である。