カウダー議員(ドイツ連邦議会キリスト教民主・社会同盟会派会長)講演会

 2012年8月8日、法学研究科と高等司法研究科は、ドイツ連邦議会キリスト教民主・社会同盟会派会長フォルカー・カウダー(Volker Kauder)議員一行の訪日を期に、ドイツ・アデナウアー財団との共催で、カウダー議員講演会「ヨーロッパはどこへ向かって進むのか?」(Wohin steuert Europa?)を開催しました。

 カウダー議員は、与党会派会長(日本でいえば「与党幹事長+参議院与党会派議員会長」のような立場)を務め、メルケル首相の「右腕」としてドイツ政界で中心的な役割を果たす実力者です。講演会には、ユーロ危機などでヨーロッパへの関心が高まる中、大阪大学および他大学から、70名以上にのぼる教員、学生が参加しました。

講演するカウダー議員
講演するカウダー議員

 講演では、冒頭で、ユーロは第二次大戦後のヨーロッパにおける平和構築の弛まぬ努力を「後戻りできない」(unumkehrbar)ものにするために導入されたものである、ということが強調されました。しかしながら、ユーロ安定にとっては、その導入時に約束された財政規律の遵守が不可欠の前提であったにもかかわらず、ドイツ、フランスをはじめ、各国がそれを守らず、その結果、今日の危機にいたった。それ故、短期的には、危機に陥った国々を救済する手立てを講じると同時に、長期的には、新たな財政規律条約の締結と、憲法によって国の債務を制限する仕組みの導入とをめざす必要がある、との主張がなされました。そして、ヨーロッパ統合を進め、それを拘束力のある協定に基づく首尾一貫したものとするためには、国家の権限をさらにヨーロッパ・レベルへと委譲しなければならない。 その際、執政的でしかないヨーロッパ(rein exekutives Europa)には未来がないのであって、議会による統制が疎かにされてはならず、ヨーロッパの議会化をどのように進めるかが将来の中心問題となる、との指摘がなされました。さらに、ヨーロッパ各国の債務を共役化することは、議会の財政に関する権限を削減し、各国の財政的責任を弱めることにもなる。アメリカ・モデルに基づく無制限の財政的援助は破滅的なのであって、ヨーロッパの経済的競争力を高める努力こそがなされるべきである、との結論が述べられました。

コメントするドイツ大使
コメントするドイツ大使
コメントする高田教授
コメントする高田教授
質問する高田倫子氏
質問する高田倫子氏

 カウダー議員の講演に対しては、ヨルク・ヴォルフ氏(コンラート・アデナウアー財団日本事務所代表)の司会の下、フォルカー・シュタンツェル博士(駐日ドイツ大使)、神余隆博教授(関西学院副学長、前駐独日本大使)、高田篤教授(法学研究科副研究科長)、フィリップ・ミスフェルダー議員(ドイツ連邦議会キリスト教民主・社会同盟会派外交問題スポークスマン)からコメントがなされ、そして、講演会に参加した研究者、学生からも次々に質問が提起されました。カウダー議員からは、それらに対して誠実で明解な応答がなされ、講演会は大変充実したものとなりました。また、講演会の後には、立食形式の懇親会も開かれ、多くの参加者が議員一行と積極的に交流しました。

懇親会の様子懇親会の様子2
懇親会の様子

 参加者は、カウダー議員が、ユーロ危機の下、ヨーロッパが激動する中にあっても、戦後ヨーロッパ史と憲法・経済・財政の原則をしっかりと踏まえ、今後ヨーロッパが、そしてその中でドイツが、どのように未来を切り開いていくべきかを、展望と確信をもって述べられたことに感銘を受けました。また、質疑応答や懇談を通じて、議員一行の考え方や人柄に親しく触れることができ、特に将来の日本、アジア、世界を担う若い参加者にとって、永く思い出に残る貴重な機会となりました。

参加者の様子
参加者の様子