2010129日ロイヤリング講義

講師: 弁護士 近藤信久先生                   

文責 林 良樹

  

民事調停について

 

0、はじめに

弁護士の近藤信久です。大阪大学を卒業したのは平成元年です。今日は調停について話します。

ロイヤリングでは、以前に大川先生が、調停の話をしているみたいなので、裁判所による調停だけではなく、ADRなども話したいと思います。

資料の、@新聞の切り抜き「あらゆる紛争解決可能」を見てください。

こういう仕事をしている人もいます。私は、この記事を自分が仕事に行きづまった時に見るファイルに入れていますこの記事のアハティサーリ氏は、フィンランドの前の大統領です。国連の仕事で、調停の仕事を始めたみたいです。北アイルランドの紛争、コソボ、イラクの紛争などの解決に尽力されました。なぜこの資料を最初に持ってきたかといいますと、紛争解決には様々な仕組みがあります。どう解決するかにより仕組みが変わっていきます。制度が先ではなく、どうしたら紛争が解決するのかとういうのが先にあります。アハティサーリさんの場合は、どのように解決していったのか、ルールではなく経験が先にあるのだと思います。

 

1、民事調停とは?

【訴訟との比較という視点】

(レジメ参照)

調停と訴訟の大きな違いとしましては、前者は合意によって争いを柔軟に解決することを目指していて、後者は基本的には厳格な手続きで言い分を聞き証拠を調べ、判決で白黒をはっきりさせるということ。

 

【裁判外紛争解決手続としての民事調停という視点】

 ADR法は、もともとあったADRの手続を利用促進させようとするものです。

全部訴訟で解決しようとしていたら、裁判が多くなりますし、訴訟も遅延します。

行政型@公害等調整委員会(資料一枚目の下)

大気汚染、水質汚濁、騒音などの苦情などを持ち込むと調停や裁定してくれます。窓口では、住んでいる市町村の公害相談窓口です。実情は、資料B朝日新聞の「公害紛争 出向いて解決」に書いてあります。2009年1月からは、現地に行ってみて、様々な問題に取り組んでいます。ただし都道府県に持ち込まれる苦情は、年9万件ありますが、この記事のときには23件が公調委が扱っています。この制度は、費用は安く、解決期間は早いとされています。公害紛争解決においては専門知識が重要なこともあります。こういう公害を専門にしている機関が充実すると、紛争解決が進むのではないでしょうか。

 

A労働委員会 労働局の労働紛争解決制度

資料にパンフレットを載せています。

ここでは、助言や指導もあります。紛争解決の斡旋もあります。資料Dには、実際のケースが載っています。一つ目は、退職金制度がなかった場合です。この場合、事業者は、適切な金額なら払おうとしていていまして、労働者も適切な金額が欲しかったケースです。この場合は、解決する素地があるといえます。二つ目のケースでは、整理解雇に関する事案です。あっせんの申請については、ひな型がありますね、代理人弁護士をつけなくてもよいようになっています。ただ多くの事件では、お互いが言い分を譲らないなどの場合などがありますので、調整する人の技術によると思います。

資料F国民生活センター紛争委員会については、読んで頂けたらいいと思います。

 

B建築工事紛争審査会

建築工事においては、結構もめごとが多いです。建築の規模が大きかったり、孫請・曾孫請など工事に関わる当事者が多かったり、例えば地盤が弱いなどの工事にかかる前には予想できないようなことが起こるもあることによります。

建築工事紛争審査会では、直接契約関係がない元請・孫請間の紛争や、工事にともなう近隣者との紛争などは取り扱わないです。

仲裁では、不服申立ができないです。仲裁手続の前に仲裁結果に従うと合意することによります。

 

次は、民間型の調停制度の説明をします。

@総合紛争解決センター

これは、裁判所の民事調停と一緒で、もめごとなら、あらゆる種類の紛争解決が出来ます。また、民事だけではなく、家事もあり、間口は広いです。審理期間、3回程度で解決するように努力します。制度としては、和解あっせんと、仲裁手続があります。和解あっせんの場合は当事者が応じないと不成立です。ただ、まだまだ国民に知られていないことや、裁判所への信頼と比べると信頼がないのか裁判所の調停に比べると使われる数は少ないです。

 

A日本商事仲裁協会

この協会は、取引における紛争解決を目指します資料Kです。ここに仲裁の特徴が書いてあります。

1当事者が選んだ専門家による判断

 ⇔裁判所に訴状を出しても、どの裁判官にあたるかわかりません

  納得のできる人に仲裁してもらえます。

2非公開

 ⇔裁判所と違い、結果が公表されません。

 営業上の秘密やプライバシーが守られます。

3迅速性と経済性

 一審限りです。

⇔裁判所、三審制 時間がかかる

4国際的強制力

ニューヨーク条約により、その判断を外国で執行することが容易です。

⇔裁判の判決は外国で執行することは困難

 これが一番のメリットですね。

 ただ欧米以外の国での紛争の場合、せっかく仲裁が成立してトラブル解決出来ても、執行が難しい場合もあります。

申し立てることは書式に従えばいいので難しくないです。費用は訴訟ほどではないにしろある程度かかりますね。

 

Bスポーツ仲裁裁判所

資料17に記事を載せています。ドーピング問題など、選手は専門家に判断してほしいと思うのでしょうね。

 

2 利用の実情

 見ていただいたらわかると思います。

 

3 法律

 1条で目的を宣言しています。

 民事訴訟法と違い、条文数は少なく、大枠だけを規定しています。

 

4歴史

江戸時代の内済からきているのではないでしょうか。

商工業が発展し、人が集まると、借地借家など揉め事にかかわる紛争が多発する。訴訟をすると、紛争がなかなか解決されない。これにより調停制度が発足します。また調停が使える事件が増えてきて、民事調停法が出来ました。

 

 

5 弁護士川口冨男氏エッセイ

 日本人は、互譲の気持ちがあり、調停がなじみます。(レジメ参照)

レビン小林久子氏の文章もあります。

アメリカでは、ミニトライアルとかオンブズマンなど様々な方法が行われています。仲裁サービスを提供する民間団体があるなど、アメリカではADRは日本より発展しています。レビン小林久子さんが、調停を大切にしているのは、他の方法ではビジネスパートナーを失うことがあるからです。アメリカでは、雇用契約などに揉め事があれば仲裁で解決することとするというような条件を付しているようです。これには、訴えの権利が奪われるのではという批判もあります。

 

6調停における危機管理

私は、民事調停官をしていた際、様々な紛争を見て、勉強になりました。

裁判所が危機状態に対する対処方法を準備しておかないと、裁判所に紛争をもちこんでも、さらに紛争が悪化することもあります。当事者間では、顔を見るだけでも、トラブルになることもあります。裁判所を一歩でたら、相手を追いかける人もいる。離婚などの揉め事は、感情的になってしまうこともあり、気をつけないといけません。例えば、裁判所に来てもらう時間をずらすことや、職員や警備員に待合室にいてもらうこともあります。また受付段階から、トラブル発生の可能性があれば、メモで引き継ぎます。

 

7 調停委員にはどんな人がいる?

不動産鑑定士 賃料についての争い

一級建築士 建物の瑕疵の争い

医師     医療ミスについての争い

 

8申立書の書式 

 資料17を見てください。

 申立ての趣旨とは、判断して欲しい結論について書いてもらいます。訴状でいう請求の趣旨に当たります。紛争の争点は、請求の理由にあたります。代理人許可申請書を見てください。調停の場合は、弁護士ではなくても代理人になれます。(会社において代表取締役ではなく従業員、妻の代わりに夫など広く認めます)

申立された相手方には照会書を送ります。照会書を見て、第一回期日までに、裁判官や調停委員が、どのように解決していくかあたりをつけていきます。

 

9調停前置主義

訴訟の前に調停をしなければならない場合があります。

 

10事実の調査

民事訴訟と違い職権探知主義です。当事者の納得の下進めていくので、職権進行主義と言っても、当事者の意思に反しては行いません。事実の調査は、非常にフランクな感じで進められます。

 

11事実の認定

経験則や合理則を活用して、大づかみに認定していきます。調停で悪い例として、よくあげられる例があります。調停委員の研修でよくいわれる例ですが、お互いの言い分をまずじっくり聞くことが大切です。(オレンジをめぐって争う姉妹の話)

 

12現地調停

 調停委員が当事者の家など、当事者の紛争解決に適切な場所で行います。

 

13仮の措置

執行力はない(民事調停法12U)ただ、過料はあります。(前科にはならない)

 

14民事執行の停止

 話し合いを進めるため、競売を止めるなど、裁判官が判断します。

 

15終了原因

 合意成立の見込みがあれば、ずっと続ける場合もあります。他方見込みがなければ一回で終わることもあります。調停に代わる決定、不服申立期間内に不服申立がなければ、調停の成立と同じ効力を持ちます。調停調書による執行力を得るため嘘の揉め事を丁稚上げて申立するケースもないとはいえません。このようなときに調停を受け付けない措置もできます。

 

資料の最後

大阪調停協会の「大調」という機関誌のエッセイです。薩長を結び付けられたのは、坂本竜馬が無私だったからであるとしておられます。川口先生はこの心を民事調停においても大切におられるのだと思います。

 

                              以上