2010年5月6日ロイヤリング議事録

講師:的場 悠紀 先生

文責:納田拓也

「弁護士の仕事内容」

 

 

1、弁護士になるためには

皆さんご存知のように、現在は法科大学院に行かなければ弁護士になることは難しい。今年から予備試験が始まるが、予備試験の合格者をどの程度出すか議論されている。私の予想としては、旧司法試験の合格者と同数程度ではないだろうか。また法科大学院においても授業や学生の質が問題視され、定員を減らしたり、つぶれたりということが問題となっている。大阪大学については、資料1(大阪大学法科大学院出身者の合格者数・合格率に関する資料)を見ながら、実績がどれぐらいであるか確認していただきたい。

当初は法科大学院修了者の60%を司法試験に合格させると言っていたが、実際は30%程度であり公約とだいぶ違ってきている。これは、法科大学院を作りすぎたことが原因である。今後の合格者数をどうするかについて、弁護士会では合格者数を減らすということが主張されている。ただ、それは弁護士のエゴであり、自分たちのために数を増やさないというのはおかしいのではないかという議論もなされている。今後、合格者数は当初の目標であった3000人には届かないだろうが、2000人前後で推移していくのではないだろうか。

また、既習者に比べて未習者の合格率が低いという問題もある。未習者に対する配慮(5年以内に3回という受験制限を緩和するなど)がなければ、法科大学院の方針そのものが疑わしいものになってしまう。

 

2、弁護士人口

資料2(日弁連の会員数)には、日本にどのくらい弁護士がいるかが載っている。日弁連には現在、28,828人が登録している。弁護士会は、基本的に各都道府県に1会(東京は3会、北海道は4会)あり、全国に52会ある。弁護士会は強制加入であり、弁護士として仕事をしていくためには弁護士会に入ることが必要である。

弁護士会ごとの所属弁護士数をみてみると、東京や大阪などの都市部に弁護士が集中し、逆に島根などの地方では弁護士数が少なく過疎化が問題となっていることが分かる。弁護士も就職難と言われるが、地方に行けばまだまだ就職先はあるはずである。

現在、女性弁護士は全国に4,600人おり、数も増えてきている。私は、女性は弁護士に向いていると思う。私がみる限り女性に優秀な方も多く、子育てなどの問題もあるが、その点について理解のある弁護士事務所も増えてきている。因みに私の事務所では21名中3名が女性弁護士である。

資料4では、日本と海外との弁護士数の比較がなされている。近年、日本でも弁護士を増やそうとしてはいるもののアメリカなどと比べるとまだまだ少ない。ただし、単に数が増えればいいという問題ではなく、腕のいい弁護士が増えなければ人々のためにはならない。

 

3、弁護士事務所

弁護士事務所は、共同事務所と個人事務所という分け方や、弁護士法人と非弁護士法人などの分け方ができる。(複数の弁護士が所属しているという意味では、弁護士法人と共同事務所は似ているところがあるのかもしれない)弁護士法人はつい最近開始したもので、増えてきている。弁護士法人のメリットは、地域の異なるところで事務所を開設できる点である。これまで東京以外を中心に仕事をしていた弁護士が、東京に支店を出し進出することがよくある。私の事務所でも、もとは大阪に本社があって東京に本社機能を移転した企業と仕事がし易いので、実際に東京に支店を出している。しかし、デメリットとして法人化に伴い事務所運営に手間がかかる点がある。例えば、細かい会計報告が求められたり、収入の割り振りが複雑になったりする。顧客獲得の利便性の点からは、今後も弁護士法人は増加すると思う。

共同事務所とは、複数の弁護士がパートナーとなって運営している事務所のことであり、大所帯の所が多い。共同事務所のメリットとしては、大規模な倒産事件を扱える点、合議により間違いを最小にできる点、担当弁護士が病気にかかった場合などに事件をスムーズに承継できる点が挙げられる。一方でデメリットとしては、仕事や収入で意見が衝突したり、個々人の自由の制約を嫌ったりしてパートナーが分かれることがある。そのため、共同事務所では、チームの和を保てることが重要である。

個人事務所は、一人の弁護士が運営をしている事務所のことである。メリット・デメリットはちょうど共同事務所の場合の裏返しとなる。

弁護士の過疎地対策には、公設事務所を設けるなどして日弁連が力を入れている。地方の人にとっても弁護士を利用しやすい環境づくりを目指しており、今後は若手弁護士の就職の場としても有力になってくるだろう。

続いて、弁護士の広告規制について述べる。過払い利息の返還についての広告などを皆さんもみたことがあるのではないか。近年、このような弁護士の広告についても「無制限に広告を許していいのか」ということが問題となっている。資料6(大阪弁護士会弁護士の業務の広告に関する規定)を見てもらえば、実際にどのような規定が定められているか分かるだろう。例えば、「私はあの弁護士よりも優れている」というような特定の弁護士と比較するような広告や、事実に合致していない広告は禁止されている。多くの場合は、「品位や信用を損なう」かどうかで判断されているようだ。

 

4、具体的な仕事内容

⑴法律相談

弁護士業務の基本である。

⑵示談や契約などの交渉

近頃は早めに弁護士に相談する人が増えたこともあり、法律相談の約半分が示談や契約の交渉で解決される。

⑶調停・訴訟

裁判所に行って解決する場合も当然ある。

⑷オンブズマン

公共機関に不正事項がないかチェックする役割を担う弁護士もいる。

⑸行政機関の委員

客観的な視点で世の中をみることが求められ、司法委員、調停委員、教育委員、公安委員などの公務についている弁護士もいる。

⑹会社の監査役

近年、社外監査役に就任する弁護士が増えてきている。取締役と異なり、常時会社のことを知る必要がなく、業務状態を調べるだけでよいので弁護士にとっても比較的やり易い仕事である。

⑺企業内弁護士

近年の就職難の影響もあり、企業内弁護士も増えてきている。企業内弁護士とは、弁護士登録をしたうえで、会社の中で法務部に入り企業法務を担当する弁護士のことである。ただし、会社から給料をもらって働くので会社以外の仕事はできないという不自由さはある。

 

5、訴訟事件の内容

一般民事(売掛金・建物明渡など)、倒産(破産・民事再生・会社更生など)、会社関連(合併・買収・株主代表訴訟など)、知的財産権(特許・著作権など)、医療過誤、労働事件、公害事件、家事事件(相続・離婚・養育費の支払など)、消費者事件(マルチ商法・ヤミ金など)、行政事件(税金訴訟・工事差止めなど)、刑事事件(少年事件を含む)などが訴訟事件の内容として挙げられる。

 

6、弁護士の収入

資料8(弁護士の平均収入)をみると、総じて地方よりも都会の弁護士の方が平均収入が高いことが分かる。また、弁護士全体の平均年収をみるとそれなりの額をもらっているようにもみえるが、この平均値には若手からベテランまで様々な弁護士が含まれている点に注意が必要である。私の経験から、本当の意味で弁護士として一人前になるのは20年くらい経験を積んでからだと思う。だから短絡的に、1年先や5年先について一喜一憂するのではなく、10年後や20年後を見据えたうえで弁護士という仕事について考えてもらいたい。また資料10をみれば、弁護士報酬の基準が分かるので参考にしてもらいたい。

 

7、訴訟事件以外の弁護士活動

法律の制定についての意見書作成、消費者救済運動、無料法律相談、人権問題の調査及び勧告、オンブズマン活動、政界への進出など、訴訟事件以外の弁護士活動に取り組む弁護士も増えてきている。

 

8、弁護士業の今後の展望

⑴急激な弁護士増加に対応

急激な弁護士増加に対応すべく、新たな就職先として政策秘書など他のフィールドへの開拓も盛んになってくるのではないか。

⑵専門分野

自信の専門分野を持つべきである。専門分野を身につけるといっても一朝一夕に簡単に身につくものではない。積み重ねが必要であり、ある分野を1020年と専門的に扱っていく中で身につくものだと思う。

資料11(専門分野と平均所得)を見ると、各専門分野の平均所得が分かる。最も多くの収入を得ているのは渉外分野である。渉外を扱う事務所や弁護士は外国との交渉が主な仕事であるために、東京に集中している。渉外の仕事は競争が激しく、のんびりしていると事務所から追い出されてしまうこともある。また渉外の仕事は非常にハードであり、3〜4時間しか睡眠時間がないこともあるそうだ。渉外の次に多くの収入を得ているのは会社法や経済法関係での分野、その次が工業所有権分野である。上位4つの分野はいずれも大会社を仕事相手としており、そのため収入も多くなるのであろう。最近では、東京の大手事務所が大会社相手の仕事をほとんど独占してしまっている。そのため、弁護士業界にも貧富の差が実在している。

⑶国際化へ対応

最近では、中国の国際的な台頭を背景に、中国の弁護士を雇って中国との関係を持とうとする事務所が増えてきている。中国に限らず外国との仕事もさらに増えると思うので、若いうちに留学するなどして、語学を学ぶべきであろう。

⑷弁護士の自浄作用の必要性

残念ながら中には、不祥事を起こして懲戒処分を受ける弁護士もいる。人々からの信頼の上に成り立つ職である以上、今後も自浄作用は求められる。

⑸弁護士としての意識

資料13(弁護士という職を選んだことの満足度)をみると、年代ごとに弁護士という職にどの程度満足しているかがわかる。若くて雇われている弁護士のなかには「弁護士になって悪かった」と思っている人が他の年代と比べると多くいるようだ。また、20歳代の半数が「弁護士の将来は暗い」と思っている。

 

9、弁護士として要求される素質

法律を守り使う能力を養うことはもちろんだが、それ以前に常識を養い判断基準を身につけることが必要だと思う。また、何事にも好奇心を持つことが大事である。弁護士として仕事をしていると、全然知らない世界と接することも多いので、いろんな世界を知っていることが問題解決に役立つことも多い。そして、弁護士はおしゃべりである必要はなく、相手の話を聞き出すのが基本である。依頼者に話してもらわない限りは、相手が何をしたいのか分からないからだ。さらに、相手の話を熱心に聴きつつ、のめり込み過ぎないことが重要である。依頼者は自分にとって都合の良いことばかり話し、都合の悪いことを隠すこともあるので、熱中しすぎず冷静に話を聞かなければならない。

それから、私が弁護士にとって最も重要だと思うのは、「権力に対する反骨精神」である。法律というのは都合の良いようにできている。法哲学に「悪法も法である」というのがあるが、私は今でも悪法も法であると思っている。悪法があるからこそ改正が必要だし、運用をチェックしていかなければいけない。権力というのは任せておくと都合のいいように法律を作ってしまう。要するに、法律が何でも決めてしまってそれでいいのだろうか、やはり広く世間の声を聞いて反映させなければいけないはずだ。したがって権力に対する反骨精神というのは、弁護士にとって最も重要であると思う。もし、皆さんの中で弁護士になる方がいたら、これだけは守って頂きたい。

 

 

以上