200957日ロイヤリング議事録

 

講師:向井大輔先生

テーマ:司法修習・合格者の進路・新人弁護士の仕事

文責:横江紗也香

 

I 受験時代から司法研修所入所まで

1 自分で決める・動く

 私は、大学を卒業した平成18年に司法試験に合格し、去年の秋から弁護士をやっています。現在弁護士になって9ヶ月目です。

みなさんは、自分が将来どうしたいか主体的に決めて、それに向けて具体的な行動をされていますか。学生時代、私の周りには、日々をなんとなく暮らし、時期が来たから就活をする、内定が出たから就職する、という人が多かったように思います。大学生は数年後に社会に出て、誰かのために働くことになるのですから、選択の幅を狭めないように色々していた中学や高校までとは違い、自分が何をしたいのか、何ができるのか、必死で考えてほしいです。私がなぜこのようなことを言うかというと、その方が人生が楽しくなると思うからです。なんとなく生きていてもその日その日が楽しいという人もいるとは思いますが、今まで生きてきた20数年間よりも、人生80年として残りの60年間のほうがはるかに長いわけですから、この数年間をいかに考えていかに行動するかで、その後の人生の充実度は大きく変わってくると思っています。私は皆さんに、将来をどう楽しく過ごすかを考えてほしいのです。

私が受験時代に弁護士に会ったのはロイヤリングの講義を通してだけでした。今からすれば、もっと積極的に色々な弁護士の話を聞けばよかったかなぁとも思います。みなさんも今日の講義は一情報として私の話を聞いてください。その結果、「そのとおりにしよう」ではなくて、「新人弁護士がおかしなことを言っているから自分が弁護士になった時にはこうしたい」と思ってもらえるだけで十分です。

2 大学生活との両立

私は、中学3年生の時に弁護士になることを決めました。ですから大学も司法試験の勉強をすることを決めて入学しました。そして、1500人時代である3回生時の受験を本意気で受験したかったので、1回生の時から受験勉強を始めました。勉強に専念するため、アルバイトもしていません。私はアルバイトをすることでかえって受験期間が長くなり親に迷惑をかけてしまうと思ったのでしませんでした。ですから、アルバイトをして自分で学費を稼いで勉強されている方には頭が上がりません。単にアルバイトをするかしないかでも、それはなぜなのかを考えて決めてほしいです。堅苦しいかもしれませんが、一つ一つの行動に主体性をもつ。それで人生が楽しくなっていきます。なかなか実感できないかと思いますので、だまされたと思ってやってみてほしいです。

(1)講義

教養の授業には出ていましたが、学部の授業はあまり多くは出ていませんでした。これは決して褒められたことではありません。ただ、講義は予習をしてから出るべきだと思っています。教授は頭が良いので、ある程度わかった上で講義を聞かないとついていけませんし、教授もそれを望んでいるのではないでしょうか。自分で受験勉強を通じて基礎的な知識を入れた上で、視点を変えた勉強という意識で講義に出ていました。すると基礎を理解した上で、その先のこと、あるいは原理の部分を教えてもらえるので、理解ができますし、新たな発見があって楽しく感じることも多かったです。講義を受けることで何を得ようとしているのかを考えてほしいです。仮に得るものがわからないと考えているのなら、自ら予習をして得るものを発見できるようにするか、出ないかのどちらかです。

(2)部活動・サークル

私は中学・高校時代にバレーボール部に入っていたので、大学時代においてもバレーボールサークルに入り、3回生のときにはキャプテンも務めました。全く法学と切り離された友人と時間を過ごすことで、勉強だけに頭が固執しないようにするため、サークルに入っていました。練習の後のだらだらした時間などは主体的に制限することもありました。このことでメンバーとうまくやっていけないのではないかと不安になったこともありましたが、友人に相談したところ、「そんなことでどうこうなるような気を遣わないといけない友達なら、将来的にも付き合っていくべき本当の友達とはいえないんじゃないの」という言葉を受けて、ある程度割り切って行動していくことができました。実際に、サークルメンバーは現在でも旅行に行ったり、定期的に会ったりできる一生の友達です。

(3)アルバイト

先ほどもいったとおり、勉強に専念するため、主体的に「しない」という選択をしました。これは個々人の事情があると思いますので、こうすべきということはありません。

(4)旅行

大学時代に行っておいた方がいいと思います。弁護士になってから1週間事務所をあけるのは、依頼者との信頼関係を築く上ではなかなか難しいところです。

(5)受験指導校

もし行くのであれば学部時代に行ったほうがいいです。ロースクールに入ってからでは時間がありません。そして、受験指導校は「受験のため」であることを自覚して主体的に利用すべきだと私自身は思います。受験指導校の講義は受験に特化しているので、法の全体像であったり背景、深い考え方等は教えてくれませんが、そのことをしっかりと認識した上でであれば、受験には有用であると個人的には思っています。三段論法であったり、趣旨から考えて必要性・許容性を使って事実を解きほぐすという発想を事細かに教えるほど大学の講義はレベルが低くありません。しかし、そういった基礎の基礎ができていない人が受験生の中にたくさんいることもまた事実です。受験指導校の講義は、法律を扱っていく上で必要十分なことを教えてくれるわけではありませんので、その点は念頭に置いた上で「何のために通うのか」を考えて利用してほしいと思います。

(6)法科大学院入学試験

準備は早ければ早い方がいいと思います。受験に特化した勉強をできるのは学部時代だけです。ロースクール出身の弁護士に話を聞くと、ロースクール時代は、講義をしっかり理解し、単位を取得していかないといけない、しかし一方で講義そのものが試験に直結しているかというとそうは感じないことがある、したがって講義対策と受験対策のジレンマに陥ることもしばしばあるそうです。

3 司法試験を受験するまで

私は生活の中心に勉強を据えていました。早く弁護士になりたかったからですし、人生において「何に代えてもこれをする」という時期をもつことが大切だとなんとなく感じていたからです。そういった時期に勉強そのものを目的にしていたら本当に疲れてしまうと思います。そんな時には自分が将来どんな事務所に入って、どういう弁護士になりたいのかを具体的に考えてほしいです。私も、受験勉強を始めたときは漠然としていた将来像が、勉強を進めながらだんだん具体化していきました。そうすると、目の前の勉強が将来どのように役立つのかがぼんやりと意識しながら勉強するようになってきます。そして、実務家登用試験である司法試験でも結局将来実務家として使える能力が備わっているかが試されていると思います。受験勉強期間のうち、最初の2年間はそういった意識ができておらずさまよっていましたが、後半2年間はそうした意識をもつことで実力が付いていくのを実感しながら勉強することができました。自分が将来どうなりたいか、今の勉強がそれにどう活きるのかを考えてほしいです。また、友達とそのような話をしてほしいです。将来のことを友人と話す機会は少ないかもしれませんが、もうみなさんは中高生ではないのですから、そういう少しくさい話を本気でしてみるのもいいと思います。

合格者1500人時代が終わり、合格者は500人になり、同期の中にはロースクールを目指す友人がほとんどでしたが、私が旧試験を受験することに決めた理由は、あと1年頑張ればなんとかなると思ったからです。このような自分の主体的な感覚を大事にしてほしいです。現在は「試験に受かっても就職困難だ」、「仕事がない」といった情報ばかりが取り沙汰されていますが、そのような情報に振り回されないで下さい。能力があればやっていけると思っています。ここでいう能力は生まれもったものではなく、努力です。弁護士としてこうあるべきだ、という理想像を念頭において、やるべきことを全力でやっていたら、集まるところには仕事は集まりますし、就職口も当然あると思います。事務所側が求めている人材もそのような人物だと思っています。情報に振り回されて、勉強が手に付かないということは避けてほしいです。

4 司法試験受験後・合格・司法修習開始まで

 今は就活の時期が早まっているので、試験に受かるまでに、気分転換にでもどういった事務所に入りたいかを考えておくといいと思います。私は受験後合格発表前に事務所をたくさん探して自分はどんな事務所で働くことが向いているのかを考える時間を多く持ちました。

また、裁判官や検察官になろうと考えている方は試験の成績と修習の成績がある程度良くないとなることが難しいので、司法研修所に入所するまでに予め勉強はしてほしいと思っています。受かったら「白表紙」という司法研修所のテキストを勉強してたらいいかと思います。

5 就職活動

(1)法曹の就職活動

ア 弁護士の場合

弁護士の就職活動について具体的なイメージがなかなか湧かない方もおられるかと思います。法律事務所の就職活動の多くは夕方からです。18時半頃から説明会があり、そのあと事務所の先生と食事をするというものです。この過程で弁護士が何を見ているかというと、能力もさることながら、人柄を見ているのです。「事務所選びは結婚と同じくらい真剣にかつ慎重に考えろ」とよく言われます。人間的に事務所の人とうまくやっていけるかどうかが重要だという意味合いです。仮に入所できた場合には、自分が数年以上その事務所で過ごすことになるのですから、就職難と言われる時代でも、「選ばれる」ではなく、「自分が選ぶんだ」という考え方で就職活動をしてほしいです。

イ 裁判官・検察官の場合

研修所の教官に、裁判官や検察官になりたいことをアピールしておくべきです。色々な要素を見ているのは当然ですが、それについては私はよく分かりません。ですが、やはり成績がある程度良くなければ、なかなか声がかからないかとと思いますので成績は意識せざるを得ないかと思います。

(2)選択基準

私は、いろんな分野の仕事をしたいと思い、大規模な事務所を選びました。現在は専門を身につけろとよく言われる時代ですが、専門にしたいと思う仕事がイコール専門にできる仕事ではないと思っています。依頼者に求められ、必要とされて初めて専門にできると思うのです。それは色々な事件に携わる中で発見できるものだと思い大規模な事務所を選択しました。

もっとも、大規模事務所に行きたいと思っていても小規模な事務所にも足を運んで、比較するべきだと思います。それぞれのメリット・デメリットが必ずありますから、それを自分の目で確認した方がいいと思います。

私のいる事務所は比較的自分で考えたとおりに仕事をさせてもらえますが、パートナーとの仕事の仕方は事務所によってさまざまです。色々な事務所の話を聞いてほしいです。パートナーに直接聞くのは難しい場合には、若手の先生にあとからメールで聞くなりするといいかと思います。それから、私が一番大切だと思う点は、若手弁護士の目を見るということです。彼らがどんな目つきで仕事をしているのかを見てほしいです。自分が入所後にどういった空気の中で仕事をするのかを判断するのに有用だからです。第一印象だけでなく、色々な弁護士としっかりと話をしてみるべきだと思います。また自分自身がどのような生活を送っていきたいかを考えて、その事務所の弁護士のライフスタイルを聞いておくことも重要だと思います。私は、今のところは毎日9時前に出勤し、22時か22時半に仕事を終え、2時前に寝るという生活が多いです。どのようなライフスタイルかはできるだけ探っておいたらいいと思います。

 

(3)すべきこと・すべきじゃないこと

自分が選びに行くというスタンスを貫いてください。横柄になれという意味ではありません。主体性を大切にするという意味です。そうすればすぐに就職先も決まるのではないでしょうか。事務所訪問に行ってその弁護士たちと過ごしていて毎日が充実したものにできるかどうかを基準に決めればいいのです。事務所としても主体的に動いている人をとりたいです。わずか9ヶ月だけですが、言われたことだけをやっている人は弁護士に向かないと思っています。

 

II 司法修習生活

1 特権

修習期間は1年間で忙しいけれども楽しいです。貸与制にはなってしまいますが、給料をもらえる上に、9時から5時の勤務で、何より勉強できる身分です。裁判官・検察官・弁護士の枠を超えて何でも聞けます。弁護士にとってみれば裁判官室や取調室に入ることができるのも修習生時代が最初で最後だと思います。弁護士志望の方は、そうした特権を存分に使って、裁判官や検察官がどのような考え方で仕事をしているのかを探ってみるのもいいと思います。

2 進路

情報を早く集め、早急に決めることが大切です。同期のつながりも重要です。

3 集合修習

埼玉県和光市で講義を受けます。最近の二回試験はなかなか難しいと言われていますが、集合修習で学ぶ研修所のルールをマスターしてしっかりと勉強すればば大丈夫です。同期と遊んだり、勉強以外の色々な話をする時間もありますから、遊びと勉強のメリハリをつけて楽しんでほしいと思います。

4 実務修習

(1)裁判修習

判決を書いたり、傍聴したりします。裁判修習で私がやって欲しいなと思うのは、書記官の立場からの証人尋問の聞き取りです。実際の裁判では、尋問調書に載らないと裁判官の目には触れられないですし、証拠としても効力を発揮できません。どういった尋問だと聞き取りやすいのかを聞き手の側で体感すべきだと思います。例えば前置きが長く、いきなり「ところで」と言って質問をする弁護士がいたりするのですが、それでは書記官が困りますし、調書としても論理が不明確なものになってしまいます。余計なことを一切言わず、端的に必要な質問だけをする弁護士は本当に優秀だと思います。自分はまだまだその域には達せられません。

カリキュラムになくとも、自分からやってみたいと言えば、ダメという裁判官はいないと思います。やはり主体的に行動するということです。

(2)検察修習

実際に、調書をまきます。調書を作成することを「まく」と言ったりするのですが、被疑者を目の前にして、取調べを行い、調書をとるのです。起訴・不起訴の判断や、求刑意見を公判部へ提出したりします。検察修習は実際の仕事に自ら携われるのでとてもやりがいが大きいと思います。検察修習では、いかに真実を見極めること、引き出すことが難しいのかを感じることになると思います。

(3)弁護修習

 表修習と俗に裏修習と言われているものに分かれています。裏修習というのは2週間だけ表とは別の事務所で修習することができます。夜には飲みに連れて行ってくれる先生もけっこういます。お酒が苦手な人も、お酒の席でしかなかなか話してくれないような、色々な話が聞けるので是非行ってください。

5 二回試験

1日7時間半の5日連続で休憩はありません。1科目あたり3040ページ書きます。絶対にこれをしてはいけないという様々な暗黙のルールがあるようですが、実際には教官の言われたことを確実に実践しさえすればしなくて済むようなことばかりです。あまりそういった裏ルールに気を取られるのは得策だとは思いませんが、一応の参考にはなるので、先輩弁護士、あるいは同期から情報を集めておくといいかと思います。

 

III 弁護士1年目の生活

1 日々の業務

(1)取扱件数

当然ですが、新人であることは言い訳になりません。依頼者からしたら新人も30年目のベテランも弁護士には変わりはないのですから。ただ、そういった責任があるからこそ楽しいし、充実した仕事ができていると感じています。弁護士の仕事にルーティンワークは一切ありません。

私は、弁護士になってから、これまでに約60件を担当していて、今現在動いている事件が2030件くらいです。色々な事件を担当していく中で、悩み勉強し、実践していきますので、実力がつくとともに、自分の未熟さを実感しています。

(2)法律

実際の事件で問題になる法律は、見たことがない、または知らなかった法律が8割以上です。六法だけで解決できる事件はほぼありません。様々な特別法が関わっています。試験で求められる民法の知識といったものはあって当然なのですが、見たことのない法律をその法律の趣旨から必要性・許容性を考えて、結論を導くという作業がとても多いです。そのような法的な思考を、大学の講義や、ロースクールの講義、あるいは司法試験を通じて養うことができるのだと思います。

(3)第一線での現場対応

毎日自分でやる仕事ばかりです。そこは新人でもベテランでも同じです。私は、新人弁護士には謙虚さと貪欲さが必要だと思っています。毎日が知らないことだらけですが、そんな時に意識していることは知ったかぶりをしないことと、5W1Hを聴きとって事実を確定させることです。まずは事実を確定させないと法律をあてはめることができません。法的に分からないことはあとで調べます。その場で知ったかぶりをすることは最も恐ろしいことです。依頼者の権利を失わせることに繋がりかねません。実際のところ、弁護士バッジをつけると偉くなったような錯覚に陥っているのではないかと思ってしまう方もいます。「先生、先生」と年上の人に呼ばれても、しっかりと自分がわかること・わからないことを自覚しておくべきです。このように、謙虚さを持つとともに、もちろん知らないままではいけないので、必死で調べてついていく貪欲さもまた必要です。弁護士の仕事というのはその繰り返しではないだろうかと思います。

少し余談ですが、日本人というのはそもそも争いが嫌いな人種だと思うので、私は常々「そもそも弁護士が介入すべきかどうか」という観点から対応すべきだと考えて仕事をしています。弁護士が介入することでかえってややこしくなることはたくさんあります。みなさんが弁護士になられた場合にもその発想は持っていて欲しいなと思います。

2 事務所事件・個人事件

個人事件は、具体的には弁護士会で行っている法律相談や国選弁護、あるいは知人の伝手で依頼を受けます。しかし、何よりも「以前の依頼者の紹介」というのが顧客を増やす最良の手段だと思います。目の前の事件を必死でやってその依頼者から信頼されることが次の仕事に繋がると思っています。

3 委員会活動

消費者委員会と法教育委員会に所属しています。時間の関係で割愛します。

4 弁護団活動

電話機リースの被害弁護団に入っています。事務所の先輩の紹介で入ることになったのですが、弁護団活動というのは、採算度外視で困っている人のために仕事ができるのでとてもやりがいが大きいです。弁護団では事務所を超えて活動できるので、色々な弁護士と知り合える良い機会でもあります。

5 会派

弁護士会には会派という組織があるのですが、その存在意義は色々です。ちなみに私は親睦のため、事務所を超えた繋がりを見つけるために利用しています。

 

IV 法律を使う仕事に就く方へ

法律というのは誰かと誰かの利益が対立しているときに表に出てくるものです。本当は、そのような争いがなく、弁護士が必要ない世の中になることが一番幸せなことだと思います。ただ、悲しいことに今すぐにはそのような世の中にはなりそうにはありません。

もちろん弁護士である以上、依頼者のために最善の方策を考えて弁護活動をするのですが、相手方の立場にも立って、仮に全員が笑顔になるような解決方法を見つけられることができれば、それは素晴らしいことではないかなと思っています。そして、それが結果として、早期解決や依頼者のためになることも往々にしてあるものだと思います。

皆さんが、そういった相手方の立場を考えられる、大きな心をもった仕事をされることを心より願っています。

本日はどうも御静聴ありがとうございました。

以上