102日ロイヤリング議事録

講師:壇俊光先生

テーマ:「サイバー法」

文責:横江紗也香

今日は「サイバー法」をやります。

私は、平成12年に弁護士登録をし、今年で弁護士生活9年目です。日弁連のコンピュータ委員会委員などをやってます。弁護士は技術を知らない、と馬鹿にされたことが頭にきて、技術系の資格もとりました。主な取り扱い事件は、YahooBB個人情報漏洩事件被害者弁護団事件、ダスキン未認可添加物事件株主代表訴訟、winny事件である。普段は民事、たとえば、相続財産の分割などもやってます。

授業後に提出する感想文ではおもしろいことを書いてください。私の笑いをとるつもりで書いてください。それによって成績がかわるかもしれない(笑)。

感想文にITなど専門的なことはわからないと書く人が3人くらいいます。弁護士でもITがわからないという人もいます。しかし、そういう人に限ってIT以外のことも出来なかったりします。

弁護士は必ずしも優秀でないです。法律すら一部しかわかっていないというのが現状でです。専門性を身に付けるという言葉は、弁護士の自惚れ的な要素があります。謙虚な気分で学ぶべきだと思う。

サイバー法ですが、志す人は少ないです。なぜなら儲かりません。実際、サイバー法はかっこいいと思ってはじめた人が2,3年のうちにやめてしまうこともあります。

さて、本題に入りましょう。インターネットの特徴は、双方向性、高速性、国際性である。近年、インターネットトラブルが増加しており、たとえば、電子掲示板での誹謗中傷やオークション詐欺などがある。実際私もネット上で誹謗中傷を受けていたりします。

2ちゃんねる掲示板に、どうでもいいけど氏による私を誹謗中傷する書き込みがあったので、私は、プロバイダ責任制限法41項に基づき、発信者情報開示請求をすることにしました。この請求では、電子掲示板管理者に対して発信者情報開示仮処分をする。ここで得たIPアドレスを元にさらにプロバイダに請求をして開示をしてもらいました。

で、損害賠償請求訴訟を提起したが、どうでもいい氏は支離滅裂な主張をして、結局東京地裁で411日に謝罪文掲載と100万円の損害賠償が認められました。これに対し、どうでもいい氏は控訴したが却下されて確定しました。

不当請求の事例もある。たとえばワンクリック詐欺、情報料請求、ダイヤルQ2、ワン切り等があった。もっとも、ダイヤルQ2等に関しては、いまは電話回線をつかってインターネットをする人が少ないのであまり問題になりません。

私もワンクリック詐欺、情報料請求、ワン切りのメールや電話を受けたことがあります。

こういったメールが来たときに、ためしにクリックをした。すると、利用金額と口座名が表示されました。ワンクリック詐欺のポイントは、弁護士に依頼するかどうかが微妙な金額を請求してくることです。そして、口座名もランダムに表示されました。なかなか、凝ったことをするなと思っていて、実際に請求されるかなと思っていたがされなかった。

情報料請求の事例では、独身弁護士の「美紗都」と名乗る者から逆援助のメールが来たことがある。これはたいていサクラであって、情報料を得る新手の詐欺です。日本に「美紗都」という名の弁護士は存在しない旨の返事を送ると、出会う気がないならメール送らないよう返事が来た。これに対し、出会う気は満々なので弁護士登録番号を教えて、とメールを送ると返事は来ませんでした。

こんな話は私は敢えてやってますが、よい子の皆さんは真似しないでください。

ネットネズミ講、ネットマルチの事例もある。某大学から発信された、ネズミ講への勧誘をする書き込みに、「口座の名簿のうち一番上が抜けるのでネズミ講にあたらない、弁護士もそのように言っていた」とあった。そこで、私が、「私は弁護士でありネズミ講にあたると判断しています」とメールを送ったところ、大学から平謝りのメールが来た。なお、現金の場合はネズミ講、商品の場合はマルチ商法として、特定商取引法で厳格な規制がなされている。

情報漏洩の事例は頻繁にある。たとえば、私が担当した事件では、Yahoo!BB事件がある。

この事件では、全会員(1回目は400万人以上、2回目は600万人以上)の情報が漏洩した。

このような事態になった原因は、1つは踏み台サーバーを作ってリモートアクセスとしていたことである。踏み台サーバーというのはハッカーがハッキングするときの手口です。自らわざわざそのような手段をとるのは危険です。2つ目はアカウントの管理の問題です。アカウントが推測されやすくて、共用していた。そして、定期的に変更していなかった。これはセキュリティの基本に反しています。この事件では、Yahoo側の過失は簡単に認められた。判決で一人当たり5500円の損害賠償を認められました。

ポルノの事件もある。たとえばFLMASK事件では、モザイク解除ソフトの提供が幇助に当たると認定した。アルファネット事件ではわいせつデータはわいせつ物に当たるか否かが争われたが、最高裁はハードディスクがわいせつ物に当たるとした。新山千春アイコラ事件では、ヌードになるような人であると思われることは、名誉毀損になるとされた。この理屈を前提にすると、AV女優の顔でアイコラを作った場合は名誉毀損に該当するか否かという問題が残ることになります。

著作権と間接侵害の問題をしましょう。前提として、著作物性の判断や著作権侵害の判断は難しい。明確な基準もない。だから、人間の目で見て判断するしかないし、人間の目で見てもわからないことが多いです。著作権侵害に間接的に関与した者の責任ですが、アメリカでは代位責任、寄与侵害という考え方がある。DMCADigital Millennium Copyright Act)では、著作権侵害について現実的に認識していた場合でないと免責される。この法律によりYoutubeは合法となってます。日本では、ナイトパブG7事件で採用されたカラオケ法理(@カラオケ装置が侵害に用いられる危険性、A被害法益の重大性、B営利性、C侵害の蓋然性に対する予見可能性、D結果回避可能性を侵害の要件とする法理)があって、近年、選撮見録事件、ロクラク事件などにもあらわれているようにその適用範囲が拡大されつつあります。放送とベンチャー企業の裁判例の傾向では、複製を行った場合は侵害にあたるとされてます。これが放送業界にとって良いかどうかは微妙である。

ついでにファイル共有ソフトの話をすると、三洋電機社員画像流出事件は、社員の交際中の女性のプライベート写真がP2PソフトShareを通して流出し、それを入手した者が、女性が実名で参加しているmixiで画像を公開した事件です。ここでは実名登録を推奨していたmixiに責任があるという非難があった。しかし、匿名がいいのかという問題が残る。これは結構難しい問題です。

P2Pソフトを介して情報漏洩があった場合、民事上の責任よりも刑事上の責任のほうが広くなってます。民事責任では営利性が要件となっているのだけども、刑事事件では営利性すら問題にされないのです。Winny事件はP2Pソフト開発者が著作権侵害の幇助に問われた事件である。この事件はまだ継続中である。この事件では、マスコミ対策が最も難しかった。警察は被疑者にとって不利益な情報をマスコミにリークして、この逮捕が正当であった、と報道するように仕向けているのでメディア戦が結構重要だったりするのです。最初新聞記者に説明したけれどもこちらのいうことを書こうとしなかった。そこでIT雑誌の読者が比較的柔軟だったので、IT雑誌の取材に応じて足がかりにすることにしたのです。

 この問題の背景には、刑法学者と著作権法学者の相互理解がないことがあげられる。刑法学者はなんでもピストルと毒に例える。著作権はどこまで保護するかという利益のバランスが必要な法律なのでこのあたり刑法学者にはあまり理解できない。逆に著作権法の学者は刑事罰をちゃんと考えないので刑事処罰の範囲が非常に広いことになっている。

 弁護活動ですが、私が、金子氏(被告人)の弁護団を組むにあたり、人材確保が難しかった。弁護士は評論家状態の人が多かった。でも実際に必要なのは手足を動かせる人です。さらに海外事件の捜査できるひとも必要だった。もう、ほとんど7人の侍の気分でした。

この事件の法廷では、実際に法廷で図を使ってだれがみてもわかる立証をしました。このようなことまで、弁護士はやらなければならないです。技術立証に関して、金子氏はWinnyのしくみを解説する技術書を書いた。

Winny事件は産業界に大きな影響を与えました。P2P関連の開発はことごとく止まりました。せっかくの世界最高レベルの技術であるWinnyの技術をなんとかよい使い方できないかと思って、会社をつくって配信事業を始めた。技術者のサポートが必要だと思ってNPO法人を設立しました。

便利な技術は常に悪用されます。自動車事故で毎日多くの人が亡くなっていますし、駐車違反は常態。でも、人は自動車があたりまえになっているのでそれが自動車のせいだとは思わない。今回の事件はそれがWinnyのせいだとされた。しかし、新しい技術が悪用されて、それが幇助だといわれると、新しい技術は国民に浸透するまで、開発者が犯罪者となることになる。これはおかしいと思う。そういうことで私は闘っています。