大阪大学法学部ロイヤリング(弁護士岩谷敏昭:080703

 

上場会社のかたち

〜上場会社はどのように運営されているのか,近年の経営環境の変化〜

 

テーマ

  会社法は実務でどのように使われているのか(変容されているのか)

  会社法だけではなく,会計・税務,金融商品取引法,証券取引所規則等が上場会社のルールとなっている

  実際の上場会社の運営

  「コーポレート・ガバナンス」の実像(経営者,メインバンク,社外役員,監査法人,株主……)

  この10年余の上場会社を取り巻く経営環境の劇的変化(→今後の予測)

  資料は日経新聞記事→レジュメにある用語がある程度分かるように

 

1 90年代の上場会社 〜日本型コーポレート・ガバナンス〜

 

上場会社(取締役会・監査役会・会計監査人設置会社)の機関・人ごとに観察

 

会社法が予定する株式会社=株式による大規模資金調達,「所有と経営の分離」

 

株主(総会)〔所有〕     

↓       ↓         

取締役(会)〔経営(監督)〕←監査役(会) 〔監督〕 

  ↓            会計監査人 

代表取締役       

 

実際の会社=ピラミッド

業務分掌規程,職務権限規程等による指揮命令系統

 

(1) 代表取締役

創業者一族,生え抜き社員,親会社出身者,メインバンク出身者……

安定経営

(2) 取締役・取締役会

会社法が予定する「取締役」=経営者(「所有と経営の分離」)

会社法が予定する「取締役会」=業務執行に関する意思決定・監督機関

     ↕

実際の「取締役」=従業員の出世の到達点

ヒラ→係長→課長→部長→……→取締役 (サラリーマン双六)

各部署の代表(使用人兼務取締役)

人数が増加(かつては50名を超える例もザラ)

社長が人選

取締役会の監督機能(36222号)も不十分

取締役会上程議案=主管部署で精査済み

→常務会(経営会議,経営政策会議等)に上程され決定

→大人数の取締役会では議論も少なく追認

(3) 常務会(経営会議,経営政策会議等)

会長・社長・副社長・専務取締役・常務取締役等で構成

建前=取締役会の諮問機関等

実際=経営に関する重要事項全般につき意思決定

(4) 監査役(会)

監査役=「横滑り監査役」が多い

(5) 会計監査人(監査法人)

実質上社長が選任

経営コンサルタントも兼ねる(会社がお得意先)

甘い監査意見→大企業の突然死(長銀,拓銀,山一證券,マイカル,カネボウ……)

(6) 株主総会

96.2%1995年)

シャンシャン総会

総会屋対策のための集中日開催

議決権行使書・委任状による賛成で,開催前に結論が出ている

従業員株主が「了解,異議なし,議事進行」

形骸化(30分以内で終わるシャンシャン総会

低い配当性向

(7) 株主

@   金融機関(都銀・地銀等)

株の持合い

A   事業会社(得意先・仕入先等)

株の持合い

B   機関投資家(生保,年金基金等)

生保≒団体定期保険契約を介した株の持ち合い

好景気→年金基金,運用会社等も積極的な議決権行使をしない

C   個人株主

D   総会屋(特殊株主)

総会屋への利益供与

E   従業員持株会

株式公開を意識したら準備する

一種の安定株主

株主総会では「賛成,異議なし,議事進行」の掛け声で質問をさせない

(8) メインバンク                          (資料H)

日本型コーポレート・ガバナンス

株主総会前に社長が挨拶に伺う先はメインバンク

「今年の業績,役員人事はこのとおりです」

業績が振るわない貸付先企業にはメインバンクが役員等を派遣

 

2 日本型コーポレート・ガバナンスの背景等

(1) メインバンク制

2次世界大戦下の設備投資を銀行貸出により強行

→戦後も間接金融

→朝鮮戦争

→高度経済成長

→資金調達方法として新株発行ではなく銀行借入に依存

(経済成長率>貸出金利)

政府も,長期資金を供給する銀行に対する指導行政を通じて企業にも大きな影響を与え得る体制を選択(護送船団方式)

→各銀行による得意先企業の囲い込み

=メインバンク制

内容

資金提供

昭和4050年代のグローバル化での増資の引き受け先→資本関係での持合い(株式の相互保有)

役員派遣

メリット=未成熟な株主,取締役に代わり経営を監視

デメリット=潰れるべき会社を潰さない

(2) 株式相互保有                          (資料E)

@    メリット 互いに物言わぬ安定株主→安定経営(会社乗っ取りの防止)

A    デメリット 株主軽視,経営者の保身,低い配当,資金が寝てしまう……

(3) 高度経済成長

(4) 日本的雇用慣行(終身雇用・年功序列・定年制)→退職金

明治・大正期の徒弟制度に起源

「従業員は会社のため,会社は従業員のため」(運命共同体→従業員主権)

=極めて効率的な経営システム(ジャパン・アズ・ナンバーワン)

→従業員が安心して働ける環境を保障

→資源のない日本の財産は「人」(愛社精神の強い従業員,技術・ノウハウの蓄積等)

→取締役=出世の最終ポスト

→取締役会=特に大企業では,従業員が多いため栄進ポストとしての取締役の人数も多くなる

→社長(=取り立ててくれた上司)への権限集中

→社長に物申すムードが希薄

→チェックシステムの機能不全

→取締役・取締役会が会社法の予定する姿と質的に別のものになる

(5) (旧)企業会計基準

上場会社は,証券取引法(金融商品取引法)により,財務諸表を含む「有価証券報告書」を継続開示書類として提出

@   取得原価主義(⇔時価主義)

資産の評価=取得原価主義(資産をその取得時に支払った金額で評価)

=客観的な数値→配当可能利益の計算や課税所得の計算のためには有用

デメリット

@含み益

利益調整に用いられる(「益出し」)→含み益経営

企業の期間損益計算を歪める恐れがあり,投資家の投資判断のためのディスクローズには適さない

A含み損

バブル崩壊後,わが国の土地・株式の価格は下落傾向にあり,これによる含み損を抱えている企業が少なくない=損失の先送り

投資判断を誤らせる恐れあり

A   単体経営

個別財務諸表が主(連結財務諸表は補足)

「子会社」=「持株基準」のみ(⇔ヒト・モノ・カネ等による実質的支配)

子会社を利用した「損失押しつけ」,「利益の付け替え」→利益操作

親会社が黒字でも,実は連結グループ全体では瀕死の状態→その実態が経営破綻するまで表面化しない

B   隠れ債務

将来支払う退職金や年金は,正式な債務としては認識されず

C   基本財務諸表=貸借対照表・損益計算書のみ

損益計算書:「売上」と「利益」を開示

「売上」=未回収代金も含まれる(長期にわたり回収されなければ不良債権)

潜在的な損失を抱えたまま損益計算書上で表面的な利益が計上され,表面上の利益が出ていても黒字倒産に至る恐れあり

(6) 総会屋

株主総会荒しを示唆し金品供与,取引等を迫る

株主総会では社員株主が「賛成,異議なし,議事進行」で仕切る

 

3 近年の変化

(1) バブル崩壊→「失われた10年」

平成元年(1989年)年末

地価・株価下落(含み益経営の終焉)

企業倒産

(2) 大企業の不祥事・突然死

平成9年(1997年):山一證券,北海道拓殖銀行経営破綻

平成13年(2001年):マイカル経営破綻

平成14年(2002年):エンロン事件→企業会計改革法(サーベンス・オクスリー法)

平成16年(2004年)2月:カネボウ事件(産業再生機構に対して支援要請)

→公認会計士(中央青山監査法人)の逮捕等

平成16年(2004年)10月:西武鉄道事件(有価証券報告書の虚偽記載)

平成17年(2005年)12月:日興コーディアル事件(傘下投資会社の経理不正)

→日興コーディアルグループがシティグループ傘下入り等

平成18年(2006年)1月:ライブドア事件(有価証券報告書の虚偽記載)

→公認会計士の逮捕等

平成18年(2006年)5月:中央青山監査法人に2ヶ月間の業務停止命令

平成18年(2006年)6月:4大監査法人に業務改善命令

(3) 会計ビッグバン                         (資料@)

冷戦終結→金融ビッグバン→ロシア・中国等も含むグローバルな資金移動

→企業活動のグローバル化

⇔会計基準の不統一(各国ごとにバラバラの会計基準)

グローバル・スタンダードに合わせなければ,資金が日本の株式市場に入らない

→会計ビッグバン(会計基準のグローバル・スタンダード化)

先進国の会計士団体で構成する国際会計基準理事会(IASB)が定めた世界的に共通な会計ルールである国際会計基準International Accounting Standards)を参考に,国内の会計基準を順次改訂(1998年末に主要部分の規定が出そろう)

@   連結会計

20003月期決算〜)

有価証券報告書における財務諸表の記載順序が,従来の〔個別連結〕から〔連結個別〕に変更

従来の形式的な「持株基準」だけでなく,その会社を実質的に支配しているか否かとの「支配力基準」等により連結対象を判断→従来よりも連結の範囲が広がる

@「連結はずし」が原則できなくなり,透明な企業グループの実態を開示

A子会社が採用する会計処理の原則・手続も原則として統一

→グループ会社の範囲の見直し。

B連結経営

「選択と集中」

MA(持株会社解禁,会社分割,株式交換,簡易合併,簡易株式交換,MBO……)

→金庫株の利用

A   キャッシュ・フロー計算書

20003月期決算〜)

企業の様々な経営活動の中で,どのように資金が増減し,最終的にいくら資金が残ったかをあらわす財務諸表

=資金を基準として企業の経営活動をあらわす

比較可能性で優れる(損益計算書の利益は企業の採用する会計方針や各国の会計基準の違いにより影響を受けるが,キャッシュ・フローは現金及び現金同等物の増減という客観的事実に基づいて計算されるので,企業間の比較可能性が高い)。

→不良債権や不良在庫が顕在化

「キャッシュ・フロー経営」

売上高至上主義経営から転換

B   税効果会計

C   退職給付会計

20013月期決算

全従業員について退職後の支払総額を計算し,その支払総額を,市中金利などを考慮して現在価値に割り引いて退職給付債務とする。

金利水準・株価下落等→運用環境が厳しい→積立不足の懸念

剰余金等で退職給付債務を積み立てきれれば問題はないが,積立不足分は退職給付引当金の計上を要する

多額の引当損→5年から15年の期間で,定額法で費用処理。

「代行返上」厚生年金代行部分の返上

終身雇用への影響

→定期昇給から成果給へ

D   時価会計

(金融資産等=20013月期決算〜)

資産を時価(公正な評価額,市場価格に基づく価額,市場価格がない場合には合理的に算定された価額)で評価するため,タイムリーに企業の価値を評価

投資家にとって有用な情報を提供することができる

投資有価証券等(持合株式を含む)を時価評価

1 含み益経営の終焉+株価が下がることにより決算が悪化

2 株式相互保有の後退

E   減損会計

20063月期決算〜)

利益を生まない不動産を持つことが損失の原因となる

事業用不動産の洗い直し

F   その他 会計基準の国際化

企業結合会計,リース会計……

(4) 株式相互保有の後退                  (資料@,C,H,K)

バブル崩壊

地価・株価下落(含み益経営の終焉)

企業倒産

不良債権問題+会計ビッグバン(時価会計)+国際決済銀行の自己資本比率規制

→金融機関の体力低下(自己資本比率低下)

メインバンク制・株式相互保有後退

金融機関の相次ぐ破綻・統合

金融機関の貸し渋り

(5) メインバンク制の後退

不良債権処理

→金融機関の破綻,統合等

→他人(貸付先事業会社)の面倒を見る余裕なし,持合株式の処分……

(6) 外国人株主(機関投資家)                   (資料E,K)

株式相互保有の解消による「売り」の受け皿として,割安な日本株に「買い」を入れる

(7) 経営指標の変化

売上高至上主義経営(増収増益)

+効率的経営

ROEReturn On Equity)=利益÷資本

どれだけの資本でどれだけの利益を上げているか=効率の重視

自己株式買取,休眠資産の売却

(8) 株主代表訴訟(株主オンブズマン)

平成5年商法改正→印紙代8,400円(→13,000円)

平成1311月商法改正→取締役の責任軽減制度

大和銀行事件(大阪地判平1292053000万ドル)

ダスキン事件(最判平20212:約1062400万円)

ヤクルト事件(東京高判平20521:約67億円)

……

→取締役の責任追及の強化

(9) 総会屋の潜在化(平成9年商法改正等)

平成9年商法改正で利益供与要求罪新設+積極的検挙

→総会屋の潜在化

(10)         個人株主の発言増加

住友商事事件判決(大地判平10318,大高判平101110

行き過ぎた「了解,異議なし,議事進行」が株主総会決議取消原因になり得る

→株主総会での従業員株主の掛け声等の抑制

→個人株主の発言が増加

(11)         ディスクロージャーの強化

情報開示

証券取引所規則,金融商品取引法,会社法……

@   有価証券報告書

金融商品取引法(証券取引法)により上場会社等が提出を要求される継続開示書類

詳細な会社情報が掲載されている(開示対象が増加)

決算期後3ヶ月以内

A   決算短信

証券取引所が規則で提出を要求

決算内容を迅速に開示

有価証券報告書より簡潔

決算期後45日以内

B   適時開示

金融商品取引法(インサイダー取引規制),証券取引所規則

重要事実(MA,業績予想の修正)が発生したらすぐに開示

C   四半期開示

東京証券取引所は規則で平成15年(2003年)12月から要求(但し簡単なフォーマットで)

金融商品取引法は平成20年(2008年)4月から要求

D   ゴーイング・コンサーンの付記                   (資料B)

(平成15年(2003年)3月期〜)

「継続企業の公準」,「企業の存続可能性」……

∵ディスクロージャー(情報開示)不足による大企業の突然死

監査法人が厳格監査

注記への記載の増加(ゴーイング・コンサーン)

E   有価証券報告書等への虚偽記載等に関する損害賠償責任(平成16年証取法改正)

(平成16年(2004年)証券取引法改正→平成16年(2004年)121日施行)

損害額の推定規定

賠償責任=役員,監査法人+会社

ライブドア事件→東地判平20613(約95億円の賠償命令)     (資料J)

F   取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(会社法の内部統制システム)

平成18年(2006年)5月〜

G   コーポレート・ガバナンス報告書(東京証券取引所規則)

平成18年(2006年)3月〜

コーポレート・ガバナンスに関する考え方や基本情報,経営上の意思決定,執行及び監督に係る経営管理組織等,株主その他ステークホルダーとの関係等に関する情報

H   財務報告に係る内部統制システム(金融商品取引法の内部統制システム)

平成20年(2008年)4月〜

I   証券取引法・金融商品取引法改正による課徴金制裁の強化

平成16年(2004年)改正:発行開示書類における虚偽記載,インサイダー取引を中心とする不公正取引について課徴金を導入

平成17年(2005年)改正:継続開示書類の虚偽記載についても課徴金を導入

平成18年(2006年)改正:「見せ玉」行為についても課徴金を導入

平成20年(2008年)改正:発行開示書類・継続開示書類の不提出,公開買付に関する開示書類・大量保有報告に関する開示書類・馴合売買・安定操作取引違反行為についても課徴金を導入,課徴金の金額水準の増額等

(12)         Complianceの重視

法令・社会規範順守

雪印食品,三菱自動車,……,吉兆……

Corporate Social Responsibility企業の社会的責任)

財務諸表に表れない企業価値を高める活動,当該内容をIRに生かす活動

地球温暖化防止等

(13)         MAの増加

平成9年改正独禁法が純粋持ち株会社を解禁

その後の相次ぐ商法改正(株式交換,会社分割,金庫株解禁等々)

(14)         敵対的買収の続発

Strategic(戦略的) Buyerか,Financial Buyer

楽天→TBS,ライブドア→ニッポン放送,日本技術開発→夢真HD,ドン・キホーテ→オリジン東秀,王子製紙→北越製紙,HOYA→ペンタックス,……

村上ファンド→阪神電鉄

スティール・パートナーズ→ブルドックソース,サッポロHD……

株式公開買付制度(TOBルール)の法制度不備等→敵対的買収防衛策の導入,株式相互保有の復活                          (資料F)

平成20年(2008年)6月,敵対的買収防衛策の導入企業は500社超

⇔機関投資家等から疑問視

企業価値研究会報告(平成20年(2008年)6月):株式相互保有への危惧

敵対的買収防衛策=買収者と非買収者の企業価値向上策を株主が判断する時間を作るための手段に過ぎない(実際に発動するものではない)

MAは終わってからが本番で,友好的でも難しい(敵対的買収が成功する確率には疑問あり)

(15)         商法等改正→会社法施行(平成18年(2006年)5月)

純粋持株会社解禁,金庫株解禁,株式交換・会社分割……

新会社法

規制緩和→諸外国の企業に負けない企業制度のインフラを提供する

情報開示

内部統制

……

(16)         金融商品取引法の成立(平成18年(2006年)6月)

財務報告に係る内部統制,株式公開買付制度の整備……

(17)         証券取引所の規則改正等

誓約書,確認書,四半期開示,社外取締役,コーポレート・ガバナンス報告書……

 

4 変化の渦中にある上場会社 〜新しい日本型コーポレート・ガバナンスの形は?〜

(1) 株主                           (資料C,F,K)

@  金融機関・事業会社等の安定株主の減少

株式相互保有体制の後退→安定株主比率=上場会社で30%そこそこ

↓(敵対的買収)

株式相互保有の復活

A  外国人(機関投資家)

しがらみなき28%の「物言う株主」

B  機関投資家                          (資料L,M)

機関投資家等の比率が上昇(非居住者投資家20%弱,年金基金・投資信託10%弱)

受託者責任→「物言わぬ株主」から「物言う株主」へ質的変換

企業年金連合会「株主議決権行使基準」(平成15220日策定後,その後改訂)

http://www.pfa.or.jp/jigyou/pdf/gov_01.pdf

企業年金連合会「コーポレート・ガバナンス・ファンド」

結論が決まっている形式的株主総会から,機関投資家等が支持しない経営判断が否決され得る実質的な株主総会へ

企業年金連合会のみならず,同会から運用委託を受けた機関投資家も同調へ

株主主権の時代における資本市場対応型株主総会

C  個人株主

業績不振,株価下落,不祥事,先行き不安,コーポレート・ガバナンス,総会屋の潜伏化,住友商事事件判決で従業員株主が抑制……

→株主総会での発言等急増

株主総会の長時間化

株主からの質問の激増

(2) 株主総会                           (資料C,N)

48%2008年)

株主総会から取締役会への権限委譲(剰余金処分,自己株式取得)

→株主総会の議案が定款変更議案,取締役選任議案に集約傾向

会社提出議案が否決される時代へ

平成18年(2006年)6月 任天堂他で定款変更議案の否決

平成20年(2008年)5月 アデランス取締役選任議案否決(ファンドが代表取締役を送り込む)

総会屋対応型→一般株主対応型→IR型→資本市場対応型

株主重視経営

(3) 取締役・取締役会

@  執行役員制=マネジメント(執行→執行役員)とガバナンス(監督→取締役)の峻別

平成9年(1997年)ソニー導入→その後増加傾向

執行役=各部署を執行する責任者(上級従業員だが会社法上の「取締役」ではない)

きっかけ=経営効率の向上,グローバル・スタンダード……

効果≒取締役の人数減らし

A  社外取締役

監査役ではなく社外取締役による企業統治

敵対的買収防衛策の導入に際して独立取締役の導入が必須要件とされつつある

しかし,導入は進まず

理由)人材不足,外部の役員を導入しすぎると意思決定の迅速が失われる……

B  委員会等設置会社

平成142002年)監査特例法改正(平成152003年)41日施行)

CEO疾走型システム

cf エンロン(平成14年(2002年))=社外取締役がCEOの暴走を阻止できず

社外取締役が過半数を占める指名委員会が経営者を解任できる危うさ→導入進まず

C  退職慰労金制度の廃止

役員報酬の後払いなのに,不祥事が起こった年に偶然退職する役員に退職慰労金を支給できないリスクあり

D  役員報酬・役員賞与の成果主義化

安定から成果主義へ

E  取締役の責任

株主代表訴訟を意識し萎縮した経営

(4) 監査役

企業の不祥事頻発→商法・監査特例法改正による権限・独立性強化

昭和49 会計監査人(≒監査法人)制度

平成5 任期3年,員数3名,社外監査役,監査役会制度

平成1311月改正 任期4年,社外監査役半数以上,意見陳述権……

監査役の仕事

(適法性監査だけが職責とされても)妥当性監査は当り前

適法性監査のためには,妥当性から広く関与する

常勤監査役と非常(社外)勤監査役の役割分担

社外監査役:業界や会社の特質を理解し,経営判断・会計処理・コンプライアンス等々に広く係る→社外取締役の機能も実質的に兼ねる場合あり

(5) 監査法人                           (資料D,G)

監査不正→金融庁等による監督の強化→監査の質が劇的変化を強いられている

平成15年(2003年):公認会計士法改正

証券取引法の財務報告の適正を確保するために必要な法的基盤の整備

監査証明業務と非監査証明業務(コンサルティング)の同時提供の禁止

ローテーション・ルール(監査法人の関与社員等の一定期間での交替制)

公認会計士・監査審査会の発足

日本公認会計士協会による品質管理レビュー

平成19年(2007年):公認会計士法改正

ローテーション・ルールの強化

監査対象会社への就職制限の強化

監査法人が業務を公正かつ的確に遂行するために整備すべき業務管理体制定

課徴金の導入

公認会計士の不正,監査法人の責任が厳しく指弾される時代へ

逮捕事案(カネボウ事件,ライブドア事件……)

4大監査法人に対する業務改善命令

損害賠償責任(大阪地判平20418〔ナナボシ事件〕)

(6) 日本的雇用慣行(終身雇用・年功序列・定年制)の変容        (資料I)

リストラ等

→労働市場の流動化,成果賃金,非正規雇用の増加……

退職金制度の廃止も

(7) 内部統制

大和銀行事件判決(平成12年(2000年)),神戸製鋼事件和解(平成14年(2002年))……

効率的かつ適正に事業がなされるための仕組み,大きな組織の末端で不正が行われないようにする仕組み

財務報告にかかる内部統制

(8) 敵対的買収と株式相互保有の進行                (資料F,K)

ブルドック最高裁決定(平成19年(2007年)87日)

→株主総会が関与するスキームへ

→株式相互保有の進行

 

5 今後の経営,新しいコーポレート・ガバナンス……           (資料C)

  経営者は年間を通じて企業価値向上,株主への説明を意識して経営

  最良の敵対的買収防衛は企業価値の向上

  ここで言う「企業価値」とは? 短期的業績と中長期的業績

  「株主」とは? 機関投資家,個人株主,デイ・トレーダー,長期保有株主……

  配当政策は設備投資政策と表裏の関係

  日本では「株主」,「株式市場」が未熟

  ファイナンシャル・バイヤーの株主提案(増配等),敵対的買収も,説明を尽くしていないと退けられる

  説明責任を果たし,業績を向上させる経営