410日ロイヤリング議事録

講師:的場悠紀先生

「弁護士の仕事内容」

文責:酒井康徳

 

自己紹介:

私は1921年に満州の奉天で生まれ、現地の日本人学校で学んでいた。当時、軍国主義の下で学校おいてもスパルタ的な教育がなされ、軍人勅諭を覚えてこないと1時間立たされた上、往復ビンタを受けるなどの体罰があった。終戦後、和歌山に帰ってきていたところ、天皇が和歌山を巡幸することになったため学校から天皇に向かって旗を振って出迎えろと指導される。戦前は写真を拝むことさえ許されなかったのに、戦争から一夜明ければ国家は容易に言うことを変えた。こういったことから、国家への不信感を抱いた。これが自分の弁護士としての原点である。

今日は弁護士がどのような仕事をしているのか、ということを話したい。自分がロイヤリングを始めたのも、学生に弁護士の仕事への興味を持ってもらいたいからだった。講義を聞いて興味を持ったテーマを自分で勉強していって欲しい。

 

1 弁護士になるためには

今後は、法科大学院を卒業して新司法試験に合格し、司法修習を終えることが必要になる。例外として、平成23年以降は旧試験に代わって予備試験が設置されることになるが、法科大学院での教育の水準が上がってきているので、法科大学院での教育を受けないこのルートは難しくなるのではないかと思う。

平成19年度の阪大の新司法試験の合格者数は、神戸大学や東北大学などに比べて少なくなっている。阪大の法科大学院の認可が遅れたことなどから優秀な学生が他大学に流れてしまったということや、そもそも学生数が少ないことが原因とも言われている。

最近は司法修習の卒業試験である2回試験でも、多いときには5%程度落とされている。

 

2 修習後の進路

 裁判官が年間100名から120名程度、検察官が年間80名から100名程度採用される。他のものは弁護士になる。法曹の人口が拡大しているが、増員された人員は全て弁護士になることになる。

 毎年3000人程度司法試験に合格させるという司法制度改革に対しては、弁護士会からの批判がある。その理由としては、弁護士の就職が困難になっているという点と、弁護士の質が下がることになるという点がある。

 合格者数を増やせば弁護士の質が下がるということについては改革する前からわかっていたことだった。

 

3 弁護士人口

 日本の弁護士の数は、欧米の先進国と比べて極端に少ない。このことは弁護士1人あたりの人口を比較してみるとわかる。

 予算の制約があるため、裁判官や検察官の数は長年めだった増加がないが、弁護士の数は増加している。合格者3000人のペースで将来の弁護士人口を予測してみると、恐ろしい勢いで増えることになる。

 

4 弁護士事務所のあり方

 弁護士個人であれば事務所は1つしか持つことができないが、弁護士法人になると複数の事務所を持つことが認められる。

 弁護士事務所のうち、弁護士1人からなる事務所が最も多い。これは一人で仕事をすることを好む人が弁護士に多いからだと思う。

弁護士事務所は東京、大阪などの大都市に集中している。弁護士過疎地域には日弁連の援助で公設事務所という形で弁護士を地方に送ってきた。弁護士はできるだけ自給自足で事務所を経営するが、どうしても足りない分は援助がなされる。仕事がどれだけあるのかと思われるかもしれないが、案外仕事はあり、忙しいということである。

最近では弁護士の広告も認められている。ただし品位を欠く広告や自分の業績を誇示する広告、他の弁護士と比較した広告などは認められない。「民事専門」という程度の広告なら許される。

最近は法律事務所のホームページ等も増えてきた。

 

5 弁護士の仕事内容

 弁護士というと訴訟をやっているイメージが強いかもしれないが、一番多い仕事は法律相談。こういうことをしたいんだけど、という風に相談を持ちかけられる。示談や契約などの交渉も重要な仕事。裁判には時間とお金がかかるので、交渉による解決が大事。弁護士が入って交渉すれば示談後のトラブルが生じにくい。

 オンブズマンとしてボランティアで行政の不正等を調べる人もいるし、たとえば人権擁護委員や公害調査会委員など、行政機関の委員を勤める人もいる。

また、会社の監査役を勤めることもある。監査役は取締役会に毎回出席してその内容を監査するので、けっこう手が取られる。

企業内弁護士として働く人もいる。企業の仕事内容に拘束されるため仕事を選べない窮屈さはあるかもしれないが、その仕事だけをしたい人にとってはむしろ余分なことをしなくてもよいということになる。

 

6 訴訟事件の内容

倒産事件のうち単に破産させて残余財産を分配する事件は誰でも扱えるが、民事再生の分野については、金融とのつながりやどう企業を再生していくか判断をする能力が必要であるため専門化が著しい。

買収防衛など、会社に関連する事件も専門化している。

著作権などの知的財産権の事件も今後増えていくだろう。

医療過誤事件は近年増えているが、そのために医療従事者が減少しているという問題が生じている。患者側に立つには医者の専門的知識が必要であるため医師の協力者が必要である。

労働事件については、最近は労働組合も弱くなったが、個別の労働案件は増えつつある。

家事事件については、離婚問題や子供の問題がある。最近は女性の独立性が高くなり、慰謝料はいらないから早く分かれたいなどと相談されるケースが増えている。

消費者問題としてはサラ金事件や押し売りの事件などがある。

行政事件については最近は手続きが整備され訴訟しやすくなった。

刑事事件では、裁判員制度が来年5月から施行される。市町村が裁判員名簿を作成し、そこから裁判所が重大事件の裁判員を選ぶことになる。裁判員は裁判官が弁護士・検事立会いのもとで、面談で選ぶことになっている。4人までは裁判員にすることを拒否できる。これからは、裁判でこれまでのような難しい言葉の使用(「財物を窃取した」など)は避けられ、素人の人が見てもわかりやすい裁判になっていくだろう。弁護士会も検察庁もそのための訓練をしているが、難しいようである。

 

7 弁護士の年収

 従来、弁護士の報酬は日弁連が作成した基準があったが、公正取引委員会から注意を受け、現在では使われなくなった。

依頼者には、事件の着手金、成功したときの報酬金、及び手数料を払ってもらう。法律相談の代金の相場は、305000円または1時間10000円になっている。

 弁護士の年収はこれまで50歳代が一番高かったが、これからは40歳代がもっとも高くなるだろう。

 専門分野による年収の格差や、都市の弁護士と地方の弁護士とで年収の格差がある。会社の取締役などをしていて非常に高い年収の弁護士もいるし、そうでない弁護士もいる。全体としてみればイメージしていたよりも弁護士の年収は高くないと思われるかもしれない。

 

8 訴訟事件以外の弁護士活動

 法律の制定についての意見書を提出したり、消費者救済運動をしたり、無料法律相談をする。人権問題の調査・勧告や、オンブズマン活動をしたり、政界への進出を果たす弁護士もいる。

 

9 弁護士業の今後の展望

 急激な弁護士増への対応として、各人が専門分野を持つことが意識されている。また、外国語の習得など国際化への対応が求められる。懲戒を受ける弁護士も増えている。

 

10 弁護士として要求される資質

 常識を養い、常識で判断する習慣をつけること。何が正しいか正しくないかを判断することが重要だ。必ずしも弁が立たなくても説得的な主張をする弁護士はいる。

 何事にも好奇心を持つこと。世の中の新しいことに常に興味を持っていることは大事である。

 人の話は熱心に聞くが、自分までのめり込まないこと。弁護士は聞き上手であるべきで、依頼者の言い分を冷静に聞き取らないといけない。

 権力に対する反抗精神があること。お上が間違ってないか常に批判する精神が必要だ。刑事弁護をしていると、「なぜあんな悪い人を弁護するのか」と言われる。しかしその人が本当に悪い人かどうかは裁判をしてみなければわからない。それを裁判で決める以上、弁護士として公正な裁判を求めていく必要がある。何が何でも無罪をとらなければならないということではない。他方で、弁護士としては犯罪被害者を配慮した発言をする必要があると思う。

 明るいこと。後ろを振り返らず、前向きに対応すること。ひとつの事件で失敗しても引きずっていてはいけない。

人と会話することが好きであること。

人を見る直観力があること。私は今では5分も話せばその人の性格が大体わかるが、これは依頼者に騙されたりしながら経験を積んで身に着けていくものである。

あまのじゃくであること。時には、法律自体がおかしいのではと考えられることも大事である。

 

以上