126日ロイヤリング議事録

講師:近藤信久先生

文責:酒井康徳

「民事調停について」

 

自己紹介

H16年から非常勤で簡裁の調停官をしている。

 

民事調停とは

  民事調停は裁判所で紛争を解決する手段の一つ。

  調停件数(家事調停を含む)はH15年だと1年間で751438件。第一審訴訟件数をH12年ごろに逆転した。バブル経済崩壊後増えすぎた破産件数を減らすためにいわゆる特定調停法が施行されたことも一因と思われる。

  特定調停は、たとえば借りたお金を返したいが、今の収入では返せないというときに、返済期限の延長や分割払いにできないかなどを相手方と交渉するために利用される。

  調停につながる制度として内済という制度が江戸時代からあった。明治8年には勧解という起訴前の和解に連なるものができた(明治23年に民事訴訟法が制定され消滅した)。昭和7年には大恐慌で発生した借金の整理のために金銭債務臨時調停法が成立した。

  調停と仲裁を比較すると、仲裁はお互いがまず仲裁人の判断に従うという合意をするので仲裁判断に対し原則不服申し立てができなくなる。調停では調停委員会が間に入った話し合いの末、どうしても紛争の溝が埋まらなかった場合、調停委員会の意見に拘束されることはない(調停に代わる決定もあるが異議申立が可能)。このことは当事者としては安心感につながるように思う。逆に合意に至らないと長期間の話し合いが結局徒労に帰する危険性があるともいえる。

 

ADR(裁判外紛争処理)機関について

  ADR機関には行政型機関、民間型機関、弁護士会型機関、司法型機関がある。

  行政型機関として公害等調整委員会や中央建設工事紛争審査会、国民生活センターなどがある。

  民間型機関として、民間仲裁機関や民間調停・あっせん機関がある。民間仲裁機関としては日本海運集会所や日本商事仲裁協会などがある。

  弁護士会型では、大阪弁護士会の民事紛争処理センターなどがある。

  司法型機関としては裁判所による民事調停、家事調停がある。

  裁判外紛争処理における基本要素として、以下の5つのことが言われている。

@インフォーマリゼーション(より柔軟で簡易な手続きを導入、アクセスの容易化と手続きの迅速化、低廉化を図る)

Aディリーガリゼイション(法以外の基準を用いることを可能にし、法的基準によるとしてもその解釈や適用により広い遊びを許容する) 

Bディプロフェッショナリゼーション(法律専門家だけでなく、一級建築士、コンピューターの専門化、税理士、不動産鑑定士、医師、実業家など経営の専門家も調停委員になることができる)

Cプライヴァティゼイション(運営機関の民営化ないし私化が進行する中で手続きを設定し紛争の解決内容を決定していく自由が当事者に与えられる)

D水平化(仲裁人と当事者が対等な立場に立ってくつろいだ雰囲気の中で対話を持つことができる)

  民事調停にも上記基本要素が当てはまるが、特にいいところは、裁判官や弁護士といった法律専門職以外の様々な領域の専門家が調停委員として紛争解決に向けて意見を述べられる点のように思う。たとえば建築紛争なら建築の専門家に、医療過誤だと医師に、専門用語等を聞くことができる。特許紛争だと弁理士に入ってもらうことが多い。

 

ADRについて、アメリカではどうなっているか

  アメリカでも50年代以降膨大な訴訟件数が原因で裁判の遅れが深刻になり、訴訟費用等の負担が増加した。また、判決を待っている間に事情が変わり勝てるはずの裁判に負けてしまうという危険が生じた。

  そんな中で、訴訟よりも早く紛争を解決できる制度として自然発生的に裁判以外の制度ができてきた。アメリカでADRが提唱され、その流れが日本にも来ている。

  日本ではH16ADR促進法ができ、紛争処理をする団体を法務大臣に認証させることとなった。

 

調停手続きの流れ

  調停の申立がなされると、調停委員が選ばれ、調停期日が決まると相手方に通知がいく。

  調停申立書には、申立人の住所、氏名、相手の住所・氏名や申立の趣旨・紛争の要点を記載する。通常、申立書の典型例は簡易裁判所に置いてあり、書き方の相談にも乗ってもらえるので書くのはそれほど難しくないと思う。交通事故の場合、交通事故の証明書などを添付する。代理人許可申請書を出すと弁護士でなくとも代理人として許可してもらえることもある。

  調停の通知を受けた相手方には、@調停申立書に誤りがあるか、A申立人と折り合いがつかない原因、Bどのように当該紛争を処理して欲しいかなどを書面で回答してもらう。これはあくまで裁判所が紛争を把握するための内部文書なので、申立人には届かないし、申立人が閲覧・コピーすることもできない。

  調停が成立すると、判決と比べても強い効力がある。第1審判決に対しては控訴・上告ができるが、調停調書には原則的には不服申し立ての手続きがない。調停を成立させたことについて錯誤無効があったという主張もなかなか通りにくい。そのため弁護士が細かいことだと思って本人によく確認せずに安易に調停成立させてしまうと、あとで依頼者が納得してくれないという事態もありえ、この点は注意が必要。

  調停委員会は職権で事実の調査ができる(職権探知主義)。事実の調査は特別の方式によらず強制力によらないで資料を収集すること。たとえば医療紛争だと病院側にカルテの提出を任意にお願いすることになる。

  証拠調べは民事訴訟法に定める方式に従うが、民事調停でなされることは少ない。訴訟と二度手間になりそうなときは訴訟でやることがほとんど。

  話し合いなので調停委員会は当事者の言い分がおかしいという決め付けをすることはしない。当事者はよりかたくなになってしまうから。話し合いがつく可能性がある限り調停を続けるが、その可能性がなくなれば打ち切ることもある。

  仮の措置(民事調停法12条T)は、発想的には仮処分に近いものだが、執行力がないためそれほど多くは利用されない。

  終了原因としては、成立・不成立のほかに調停に代わる決定、裁定、取下げ、調停をしない措置、却下がある。

 

最後に

  簡裁での仕事を通じて、調停委員の方は何とか紛争を解決しようと非常に一生懸命に努力しておられるという印象を強く受けた。

  訴訟で白黒つけた方がよいと思われる揉め事と話し合いで解決した方がよい揉め事とがあるように思う。

以上