11月15日ロイヤリング議事録

講師:北岡 満 先生

文責:酒井康徳

 

自己紹介

・修習27期

・阪大を卒業し、大阪で弁護士をしている

・日弁連法務研究財団で法科大学の評価委員をしている

 

・今日は建築物の瑕疵についての話。実務的な話だが、みなさんの学習の復習にもなる話をします

・建築訴訟の数は多い。現在医療訴訟が多いといわれているが、建築訴訟の数に比べたら知れている。みなさんが学校に来る間にも家はそこらじゅうに建っていたでしょう?

 

・家を建てるのはどういう契約かを考えていきましょう

・ところで、請負と委任はどう違うのでしょうか?請負は当事者の一方がある仕事の完成を約することが前提です。委任は法律行為を委託するもので仕事の完成を前提としていません。では、医者に診察を受け、治療を受ける契約は何契約でしょう?請負ですか?委任ですか?そこの君、どう考えますか?

学生A「請負だと思います。病気を治すということを目的として、それに報酬を支払うからです。」

学生B「僕は委任と考えます。治療することに意味があり、結果は伴わなくてもいいからです。」

・そうですね。もちろん患者は病気を治療してもらうときに治ることを期待しますが、必ずしも結果を期待して医者にかかるわけではありません。なので、医者にかかるのは委任契約といわれています。

・では、弁護士はどうでしょうか

学生C「委任だと思います。」

・そう言ってくれるクライアントが多いと助かるんですが(笑)弁護士は必ずしも訴訟に勝つわけではないですね。要するに、医者も弁護士も当事者から一歩はなれたところからアドバイスする仕事です。

・注文住宅のように、家を建てることを依頼する契約は請負契約です。建て売りのように、できあがった家を買うのは売買契約です。では、自分が将来家を建てるとき、どちらの契約がいいと思いますか?請負と売買はどう違いますか?

学生D「売買。すでにできあがってるものを買えるから。」

・そうですか。実際、売買契約の場合が請負契約の場合よりも多いです。

・しかし、住宅の売買のときに瑕疵の問題は起こってきませんか?購入する家が目に見えているから大丈夫だと思いますか?

・よくある請負契約の例は服の仕立てであり、この場合は瑕疵があってもわかりやすい。しかし建築の場合は見えない部分に瑕疵があってわかりにくい。

・住んでいても気づかなかったが、あるきっかけで気づくような瑕疵がある。住んでいて10年たってから、建物の鉄骨の柱で、鉄板の厚さが建築基準法に定められている基準より薄いと判明する場合など。このような瑕疵は外から見てもわからず、天井や壁をはがしてみないとわからない。

 

事例

・建築会社が住宅の建築を引き受け、建築業者は客が指定した客所有の土地上に住宅を建てた。その住宅は建築基準法等の基準を満たしていた。しかし大雨で住宅の地盤が崩れ、住宅の床が傾いてしまった。そこで客は業者に損害賠償した。

 

・地盤は外から見ても問題ないように見えても、盛り土の上に家がのっていたり、地中に川などがあったり、地中に廃棄物や樹木が埋まっていたりする場合、往々にして地盤は沈下する

・この問題を業者と客の両方の立場から考えてみましょう。どう考えますか?

学生E「客の立場を支持します。業者としては調査する義務があったと思うからです。」

・それで大体正しいと思います。客に言われたとしても、業者には家を建てる前提として土地について調査する義務がある。家を立てる場所や環境などについて、建築業者は注意を払いアドバイスをする義務があるというのが判例。みなさんがこういったプロの仕事についたら、客が気づかないところにもアドバイスする義務があるということです。

・この場合、地盤沈下の原因として地盤が軟弱であったことが指摘されている。スウェーデン式サウンディング試験での調査によると、土地の表面上は硬いが、深さ2メートルで緩自沈となっている。75キロの試験針が自然に沈んでいく。それだけその部分は地盤が柔らかいこと。ある程度重たい建物を建てるときに補強しなければいけないことがわかる

・さて、売主に対する請求をどう法律構成するか。売買について瑕疵があるので、売主の瑕疵担保責任となる。買主は契約の解除をすることができる。解除できないときは損害賠償のみをすることができる。では、どちらをするべきか?

学生F「解除すべきだと思います」

・それだと引越ししないといけない。瑕疵の程度次第ですね。生活基盤がその家に定まっているときに地盤を補強して解決できるなら金銭的な解決をすべき。しかしあまりに瑕疵がひどかったら解約せざるを得ない

・売買費用、調査費用、引越し費用については損害賠償請求できる。では、さらに慰謝料請求はできるか?

学生G「担保責任だけではできない。不法行為や債務不履行なら可能。結論的には請求を認めるべきではないか。」

・この点、判例はわれている。建物が傾くことで本業に支障が生じたり、施工業者が投げ出したような場合には認められる可能性がある。

・では、不動産の媒介業者に請求できるか?業者には建物についての重要事項を説明する義務がある。宅建業法35条、47条を参照。本件では業者はこのような義務を果たしてなければいけない。

 

建築確認申請について

・建物建築請負契約をするにあたって、まず建物の種類・構造・規模・デザインなどを決めなければならない

・ここで一番大事なのは、いくらで建てるかを決めること。お風呂ひとつにしても予算との兼ね合いでどの器具を入れるか決めないといけない

・次に、設計をして工事請負契約を結ぶ

・建物を建てるときには法的な規制がかかってくる。これまでは非常に規制が甘かったが、現在は非常に厳しい。法改正により厳格になった。それにより現在建築申請確認が非常に滞っている。緩和措置も検討されているほど。

 

事例

・建築業者が施工基準に達しない鉄骨を使用して建物を建築し、建物の強度は計算上なんら差し支えないレベルだと主張した事例

・それに対し判決は、安全値に関してはそれでは足りず、また客がその不十分な鉄骨でいいと言ったとしても業者の責任はなくならないとした。

 

事例

・建築業者が建築確認申請とは異なる建築施工図面で工事し、建築確認申請のとおりやったら予算を超えてしまうため、客に予算の範囲内でやってくれといわれたと主張した事例

・この点、客は工事は了承したが安全性が確保されないような建築ならば頼まなかったと反論する

・この訴訟では業者の責任において基準を満たす工事をすること、代金を300万減額することを条件に和解した

 

・紛争ではそれぞれの当事者の立場に立って最善の選択をしなければならない

・建築を依頼した側(買い手側)の事情としては、何日までに新居に住みたい、何日までに建物に業務用の機械を移したい、何日から店をオープンするとすでに宣伝している、ということがある

・業者側の事情としても、契約を解除されて建築中の建物を破棄したくない(大きな損害になる)、建物の修繕で解決したいということがある

・とことん裁判で争うことによって当事者に大きな損害を与えるおそれがある

 

事例

・家の土台部分にヒビが入っている。地震がきたらどうなるかわからない。

・「布基礎」「アンカーボルト」とは?

・弁護士も裁判官もこういう知識はわからない。そこで専門家のサポートをあおぐ。この場合だと建築士。医療事故だと医者のサポートがないといけない。

 

・以上のように、建築には多くの問題が含まれている

・建物1つ建てるのに、20〜30の専門業者が入っている。基礎、屋根、などが順々に下請けで施工していく

・工期を決める際には業者は客がいつまでに建物に入りたいか聞いておかないといけない。工期が遅れたら一日あたりいくらと契約書に定められている

・品確法(住宅の品質確保に関する法)は瑕疵担保についての特別法で、業者に10年間の責任を負わせている

・専門家から争いの本質を聞くことができれば、建築紛争などの専門的な争いでも法律家の守備範囲に持って来れると知ってほしい

 

以上