10月25日ロイヤリング議事録

講師:大川治先生

文責 酒井

 

自己紹介

堂島法律事務所所属

弁護士12年目

昭和63年入学

 

・今日は、刑事弁護の実務についてる弁護士がどのような活動をしているかを講義する

 

<なぜ刑事弁護が必要か>

・普段から凶悪な犯罪のニュースが報道されたりして、治安が悪くなってると思ってる人もいるのではないでしょうか?

・刑事事件について素朴な疑問があるのではないでしょうか?

「なぜあんな悪い人を弁護するのか」「被害者にそんなこと言っていいのか」などの世間の怒りを耳にすることも

・他方で、今年だけでも無罪事件が続出

鹿児島の選挙事件など

富山の強姦事件については有罪判決を受け、服役を終えた後に真犯人が判明した

 

・弁護士バッチは目立ってちょっとはずかしかったりするので、普段の民事の仕事のときはつけない。

・しかし刑事事件のときには弁護士バッチか身分証明書がないと被疑者と面会できない

・民事の法廷では弁護士は「代理人」である。「弁護士」とは呼ばれない

・弁護士が「弁護人」と呼ばれるのは刑事弁護のときだけ。だとしたら、弁護士を名乗る以上は刑事事件をやらないといけないんじゃないだろうか?

 

・弁護士像と現実のギャップ

Ex.推理小説などの弁護人像:

「こんなとこに証拠が!」「こういうアリバイがあった!」その事件だけに時間費やす

←こういったことはありえない

・最近は「それでも僕はやってない」のような真剣な作品もあるが、かっこいい刑事ドラマのような話は現実にはあまりない。現実は地道な仕事。

・刑事弁護をすることで社会からの批判を受けることも

Ex.オウム事件の弁護人が「顧問契約を打ち切らせて下さい」と言われたり、カミソリの刃を送られたり、嫌がらせ電話などの人身攻撃を受ける

和歌山毒カレー事件でもそうだった

光市の母子殺害事件では弁護人は年間5000件もの懲戒請求を受ける 

・日本では無罪裁判が起こらない。全ての刑事事件の99.9%は有罪判決であり、否認して争ってる事件では99%が有罪判決

・ほとんどの場合が赤字で、ボランティアに近い状態

 

→これだけしんどい仕事だと弁護士は刑事弁護のやる気がなくなってしまう

 

・しかしそれだけひどい目にあう刑事弁護でも誰かがやらないといけない

・多くの人は自分が犯罪者になることを想定していない。いつ自分が犯罪者になるかわからない

Ex.業務上過失致死傷の犯罪者も事故を起こそうとして起こしたわけではない

自転車事故でも人を死なせてしまうことだってある

たとえばタバコだって未成年だと犯罪

賭けゴルフとかマージャンも賭博罪

満員電車で痴漢扱いされる可能性だってある

・そんなとき、もし「弁護人」がいなかったら?自分がつかまったらどうなる?

・攻撃する側の視点だけで刑事司法を考えても誤ってしまう

 

・刑事犯には死刑を処することだって可能

・戦前は弾圧の道具として使われた(裁判にかけたうえで処罰)

・犯罪を裁く制度は必要だが、国家(多数派)が恣意的に利用されることの危険性

・歴史上の積み重ねで現行の刑事弁護制度が存在する。憲法にまで書かれている

・「自由の国」アメリカは、同時多発テロ以降「不自由な国」に

Ex.空港ではスーツケースの鍵を壊してまで荷物のチェックをされる

→何かが起きるとものごとはがらっと変わってしまう

・余裕を失った状況で、憲法や原理的なものまで変えてしまったら昔の状態に戻ってしまう

・今の日本はどうか?「悪いやつは徹底的にやっつけろ」が多数派。寛容さのない国?

・多数派への同調。マスコミもそれに同調

→そんな中で刑事弁護の必要性が低下することは危険なこと

 

<刑事弁護のいいところ>

・世界中の人間がその人の敵であっても、弁護人はその人のために戦わなければいけないという使命を持っている

・犯人かどうかは多数決で決まるものではない。悪い人かどうかわからないから弁護する

・警察の権限によって生活のすべてが制限される。裁判によって人を殺せるほどの実力行使ができる

・むき出しの「暴力」としての逮捕・捜索差し押さえ。毎日続く取り調べでの自白

→これらに対して、弁護人は法律の力・弁論の力・ペンの力(=非暴力的な力)を使って戦うことができる

・ここに魅力がある

・刑事弁護がなくなったら、どうなるか?

→非常に閉塞した社会。みんながいいといえば有罪になる社会

 

<光市の事件へのコメント>

・事件の事実すべてを知らないので論評は避けるが、ちょっとコメントする

・「弁護人たちは世間が納得する説明をしていない。それは弁護人の品位を貶めているので懲戒だ」という発言

→「世間」って何だ?1000人の村があったら、999人が世間なのか?900人が世間なのか?世間とは大多数の人という意味に過ぎないのでは

・果たして大多数の人が、覚せい剤犯に共感したりするだろうか?それと同じことを弁護人が考えてよいのか?

・国選弁護人がそういうことを言っていては、弁護人をつけることがかえって被告人にとって不利になってしまうのではないか???

・たとえ被疑者・被告人がどんなに荒唐無稽なことをいっても、たとえ自分がどんな価値観をもっていても、たとえ自分の良心に反していたとしても、弁護人はその人のために全力で働くべき。そうじゃないならやるべきでない

・こういうこというと被害者からバッシングを受けるなどと言われるが、それは当たり前。

・民事の相談を受けたときにも光市の事件をさして「あんな弁護やっていいんですかねぇ?」などと言われたりする。確かに世間の人はそう考えるだろうけど・・・

・弁護人は悩む。自分がベストを尽くせないと考えるなら、引き受けるべきでない。それが職業倫理

 

<実際、刑事弁護がどうなっているか>

・もともと知ってる人から電話がかかってくることが多い「友達が捕まったんですけど」

・多いのは大阪では覚せい剤・麻薬、交通事故(ひき逃げなど)、ケンカなど

・痴漢事件「うちの社員が朝来ないんで心配してたら、奥さんから電話が。うちはどうしたらいいんですかねぇ?」

・そうでない場合、当番弁護士制度でまわってくる。弁護士が待機していて、依頼すると弁護士が来てくれる

・逮捕されてできるだけ早いうちに依頼すべき。それによって後々コントロールしやすい

・拘留されたら10日拘束されるので、逮捕後48時間以内に接触すべき。48時間の間に示談書を作成したり、身元引き受け書を書くと釈放される可能性がある

・検察庁に送られるとほぼ起訴される。そこで覚せい剤事実を認めても拘留されてしまう

・詐欺など複雑な事件だと20日間拘束されてしまう

 

・交流されている間:留置所に入れられる。洗面所、トイレ(丸見え)があるだけ。プライバシーはない

・この間、弁護士は接見交通権(39条)が武器。弁護士以外の人だと接見禁止(81条)されてしまう

・逮捕、拘留され、朝から晩まで取り調べを受けたら自分が犯罪をやったのかやらなかったかわからなくなってくる。そこで自白してしまったりする

・調書に自白等を記載されたら後々不利

・起訴されてから請求する保釈はお金がないと使えない

・起訴されてしまうと長引く

→起訴させないことが大事。起訴されても、不利益な証拠をつくらせないことが大事

 

・弁護人の面会時間は1日2時間程度が限度(このくらいが被疑者の集中力の限界)

・取調べは朝から夜の9時、10時まで連日続く

→だんだん弁護士の言うこと信じられなくなってくる。警察を信じるようになる

Ex.警察「10日で釈放してやるから、認めとけ」

→つらさから認めてしまうことが多い

・いかに拘留を短くするかが大事「

→拘留延長させない(拘留に対する準抗告など)

・弁護士の手元には検察側と比べて圧倒的に情報がない

→情報としては、接見で本人から聞いた内容(ただ、ポリカーボネート越しだと声が聞こえにくい)、友人の目撃情報など。本人も拘留の理由等をわかってないことがある

→裁判所に拘留状のコピーを申請しても、手に入るのは2,3日後。その間逮捕の理由がわからないまま弁護活動することも

・また、拘留状の内容は極めて簡素。それだけでは事実がよくわからない

・刑事コロンボやエルキューコアとは違ってはじめから情報があることはない

・警察が新聞などに流す情報は意図的なもので、重要なことは出さない。警察は情報をコントロールしながら開示してる

・裁判所に拘留理由開示請求するとちょっとだけ事実がわかったりする

Ex.裁判官「布団に血がついてた」

・捜査段階の最終段階ではなんとか不起訴にできないかがんばる。示談書の作成、被疑者に反省させる、検察官との交渉で起訴猶予にしてもらう、罰上をかえてもらうなど(罰金刑だと略式手続きで済ませられる)

・起訴と不起訴は雲泥の差

→起訴されたらほぼ前科ものになる

→不起訴なら前科がつかない。前歴もつかない(指紋などは捜査機関に残るが)

・公判になると9割以上有罪だが、捜査段階で不起訴を得ることはけっこうできる

→捜査段階の活動が成功したら大きい

 

・アメリカではガサ入れに対して弁護士が立ち会う

→しかし日本では捜索差し押さえ令状がこっそり出されて、捜索が朝の7時ごろに始められる。1時間くらいで証拠物などが全部持っていかれるので、立ち会うことが難しい。法的には持っていってはいけないものを持っていかれたりしてしまう

 

<起訴されてしまった場合>

・否認事件と自白事件では進み方が違う

・弁護人にも起訴状が届くので内容をチェックする。検察官が用いようとしている証拠は基本的に弁護人に開示される。

→しかし、たとえば殺人事件ならロッカーいっぱいの証拠が集められる

→その中のごく一部しか開示されない

・これまでは残りの証拠が開示されなかったため、その中に被告人に有利な証拠があっても使えなかった

→これまで証拠開示をしろ、しないでもめていた

→今では公判前整理手続きで証拠開示請求ができるようになった

 

・起訴されてすぐ裁判になるわけでない。1回目の公判期日までに、1月から1月半くらい期間が空く

・被告人はその間ずっと拘留されっぱなし→裁判所に早く期日をいれてほしいと請求し、弁護士側も予定を合わせる

・ただし裁判は早ければいいというわけではない

 Ex.執行猶予がついてる人が再犯を犯してしまうとほぼ実刑。執行猶予も取り消されてしまう→判決の言い渡しが執行猶予期間過ぎてから出されるように調整する

   起訴状一本主義だからはじめ裁判所は前科について知らない→公判になってわかる

   弁護人「裁判長、ちょっとその期日は予定が・・・」

裁判長「そうですか。じゃあもうちょっと後にしましょう」

   →裁判所もいたずらに刑を重くしたいわけではない

 

  情状をよくする。

  被害弁償では弁護士が本人に代わって謝罪する→そこで怒られたりすることもex.「弁護士雇う金あるんならもっと払え!」

・かつて、黒塗りの車に乗せられて、南港のほうへ・・・そしてファミレスで示談

 

・これまで、法廷で被告人と弁護人の距離が遠かったが、最近では弁護人席の前に被告人を座らせてくれる裁判所も

・はじめ、人定質問がされる。「名前は?本籍は?」など。本籍をちゃんと言えない被告人も→印象がよくない??

・検察官の起訴状朗読 控訴事実、罰状を早口で朗読(30秒くらいで終わってしまう)

・黙秘権の告知

・起訴状に対する被告人、弁護人の意見を求める

・ここで被告人がどういうかでその後の雰囲気ががらっと変わる

「身に覚えがありません」→張り詰める 「どの部分が違いますか?」

・証拠調べ手続き

・冒頭陳述

・証拠調べ請求

・調書に弁護人が同意するかどうか確認。争う事件なら全部不同意して証人を呼ぶ

 

・傍聴を見にいくと参考になる。徹底的に争ってる事件は証人尋問が見られておもしろい

・尋問の勉強をきちんとして経験をつんでる弁護士だったらおもしろい

・「異議あり」←恥ずかしい??

・あまり華麗な尋問を見られることは少ない

・午後の時間を丸々使ってやってる事件は大きな事件でおもしろいかも

 

・事実は認めていてなんとか執行猶予にしてほしいときに情状の弁護をする

・奥さんに証人にでてきてもらう→泣く「主人がいないと生活できないんです」

・赤ん坊連れてくる→泣く

・いかに被告人を解放する必要があるか訴える

・裁判官にも情はある

 

・裁判員裁判の導入によって有罪裁判が減るかもしれない

・裁判官が全員有罪といっても、裁判員が無罪だったら有罪にできない

・証言をいかに一般人に聞いてもらってわかってもらうかがポイント(プレゼンテーション裁判)

・刑事裁判が大きく変わる可能性

・これまで捜査側が作成していた調書によっていたのが証言が中心になる

・疑わしきは被告人の利益にの原則が守られるのではないか

・世間も刑事裁判のことを理解してくれるようになるかもしれない

・これからは刑事弁護も脚光を浴び、やりがいのある仕事になるのではないか

 

・これから企業で働く人は、刑事弁護のことを考えていてほしい

・裁判官を目指す人は、刑事弁護人をあたたかい目で見守ってほしい

・検察官を目指す人は、フェアプレーを心がけてほしい

・弁護士を目指す人は、ぜひ刑事弁護をやってほしい

 

以上