10月18日 ロイヤリング議事録

講師:三木秀夫先生

文責:酒井康徳

 

今日の話:NPO法人の実務と公益法人改革をできるだけ生の話を交えて進める

 

近時、明治以来110年ぶりの法人制度の大改革

→民法の法人規定がごそっとぬけ、商法から会社法が分離

  H10 特定非営利活動促進法(NPO法)成立・施行

  H13 中間法人法成立、翌年施行

  H17 会社法成立、翌年施行

  H18 民法大改正・公益制度改革法成立(H20年〜施行)

 

従来の法人制度での講学上の解説

  営利法人/非営利法人と、公益法人/非公益法人という区別

  それらの中間に位置するものを中間法人とされた

  横軸に営利/非営利、縦軸に公益/非公益を区切って、4区分で考えると分かりやすい

  中間法人はこの軸を元に考えると、右下の非営利・非公益に位置する(中間ではない)

 

新制度では、

  会社法が、左側の営利法人軸側を整理

  一般社団・財団法人法が非営利法人軸を整理(公益・非公益を問わない)

 

NPOとは何か?

Non Profit Organization=非・営利・組織

・狭義のNPOは、行政との関わりが薄く、民間で自由に活動する団体を指す

NPO法で認証された特定非営利活動法人が最狭義のNPO(いわゆるNPO法人)

・現時点で32000法人が存在。ここ10年で公益法人の数を抜く(公益法人は24000法人)

・一番多いのが保険医療福祉 ex.介護団体、病院に行けない老人を搬送するサービスなど

・次に、社会教育やまちづくりをする団体、環境保全団体などが多い 

ex.開発に脅かされている森で自然教室を開くなど

・子どもの健全育成 ありとあらゆる学校外の活動を支える

→行政ではできないような運営(楽しさ)で子どもを集める事例が多くある

 

一連の非営利公益法人改革に参加した契機:ある海外支援団体との出会い

主にアジアの子供たちを貧困から守るための現地支援と国内募金活動を行うNGO

→長年活動する中で、法人格が必要になる

・建物を借りる名義

・預金の名義

・リース契約の名義 ex.コピー機の契約

などでは法人格がないと不便(代表者個人名で行うと交代の際の問題などの不便など)

→法人格を取得するための活動が始まる

→当初、民法34条の社団法人しかなく、外務省に申請

→毎年、外務省に対し、必要とされた膨大な書類を提出するも、厳しい対応

→現実として、草の根NGOには社団法人の許可は大変困難だとわかる

 

旧民法34条の問題点(3つ)

@    公益性の判断

・当時、草の根団体はほとんど法人格を取得できていなかった

  Cf.行政の外郭的団体などはすぐ法人格取得できた

・主務官庁に申請し、許可を受けることが必要

 →旧民法34条にいう「公益」に該当するかを判断するのは官庁

→官庁が「公益あり」と認めてくれないと法人格取得できない

 →たとえば、死刑廃止活動を展開するNGOが仲の悪い法務省から許可を受けることなどは、極めて絶望的観測

A    主務官庁制

・あるNGOの公益法人の設立許可申請中に、許可直前に、阪神淡路大震災が起こる

→そのNGOが海外支援で積み重ねたノウハウを活用して阪神間の子どもたち救援に乗り出そうとしたら、外務省から「外務省の管轄であるのだから、まさか日本の神戸の子どもたちの支援をしようとしていないでしょうね?」と言われる

→もともと草の根で活動している団体に対して、省庁が管轄を問題にしている

→縦割り・省益の弊害(民の活動に押しつけ弊害)

B    許可制

・原則禁止し、例外的に許可する

→公益国家独占主義といえるのでは?

戦後、様々な価値観にしたがって草の根の活動が展開される現状にそぐわない

 

NPOとボランティアの違い

NPOの運営経費は事業収入からまかなうことができる cf.ボランティア:構成員の負担

・株式会社とNPOの違い:得た収入を利益分配するかどうか(非営利・営利の差)

→NPOは利潤は構成員に配分せず、翌年にまわす cf.株式会社:配分する

  今回の大改正以前の制度問題

→利益を配当しないというだけで法人格取得に関して株式会社と大きな差異

   会社:資本金を集めて登記手続きさえすれば取得できる(準則主義)

   NPO:原則不許可。公益性の審査を経て初めて取得できる(許可主義)

→この差はおかしくないか?

・また、省庁が公益性の判断

→何をもって「公益」とするか、省庁の価値判断に委ねられてしまう

→国の役に立つかどうかで法人格を認めるかどうか判断するのはおかしくないか?

Cf.・アメリカでは一定の書類等を提出すればすぐに法人格取得できる、

また税制上の優遇もあり、博物館なども市民の集まりから生まれている

・実際、世界各国に存在するNGO(例:セーブザチルドレン、アムネステルインターナショナル)などで法人格がなかったのは日本くらいであった

・社団法人の認定に関する裁判例

足立区医師会事件:旧民法34条に関する問題。社団法人足立区医師会(医師会は各区

ごとにある)が医療行政上の便宜から社団法人と認められていたところ、同じ足立区内で第二の医師会をつくろうとした医師グループが自分たちを社団法人と認めるよう申請した。しかしこれが不許可とされたため、医師グループは取り消し請求訴訟

→最高裁は、不許可は主務官庁の裁量事由であり、本問では許可するか否かは公衆衛生行政に差しさわりがあるので不許可は相当とした

     ↑社団法人が行政から独立したものという発想はない

・我妻民法にも当初から問題点が指摘されていた 

・「公益の名の下に偽善を働く輩がはこびるのを防止する」というだけで不許可原則とするのはおかしいのでは?

 

→以上のような問題が叫ばれる中、民法を改正しようという動きが起こる

H10 市民団体の活動から、阪神大震災の後の世論の高まりを背景に、NPO法が国会での全会一致で成立(行政官僚が関わらすに成立した初の議員立法では)

→これまで草の根で活動していた団体が簡単に法人格を取得できるようになった

 

NPO法の概要

(1)特徴:民法34条に対する反省から、以下の規定

@ 法律に法人格取得の要件を全て記載

A 認証主義の採用→公益性の判断から行政を排除

B 認証までの期間の明記

C 17項目の活動目的による団体要件 ex.保険、医療又は福祉の増進を図る活動

D 都道府県知事による団体委任事務

E 市民への情報公開の徹底

(2)認証要件とその具体事例

・目的に関する要件 ex.宗教活動を主たる目的とするものでない

・社員に関する要件

・役員に関する要件

・暴力団排除の要件

(3)認証申請手続きの規定

 

公益法人改革について

  行政・営利企業・非営利組織という3つの輪を対等において考えると分かりやすい

  従来、行政・営利企業については、両者の独立性が明確だったが、非営利の代表であった旧公益法人は実態として行政との独立性が曖昧だった(実態として行政内にあった)

→今回の改革により行政から公益法人を、実態的に独立させた

・これまでの実質上影響力を持つ行政庁が表に出ない公益法人について

日本は公務員大国だといわれるが、実際は日本の公務員数は少ない(フランスの3分の1

しかし、公務員のまわりにある従来の公益法人まで含めると巨大になるといわれていた

 

・公益法人改革3

@「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」

A「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律案」

B「関係法律整備法」

2006526日国会で成立

どのような法律か?

@は、公益非公益を問わずに非営利法人全体を対象とした→準則主義の採用

(中間法人の廃止)

Aは、公益社団法人、公益財団法人を創設し、公益認定は第三者機関を設置して判断

Bは、多数の関係法律との関係規定

 

問題点と課題

・当初は世の中が混乱するのでは?

・従来の「社団法人」の語感を利用する輩が出現??

 

@    市民の使いやすさは?

 ・会社法並みの条文数

・法務省の役人が作成、訴訟手続きまで含む詳細すぎな規定

→精緻すぎて一般市民にはわかりにくいのでは?

A    公益性

 ・事務局は行政が行う→公益性判断に行政の影響力が及ぶのでは??

 ・市民のために法を運用してくれる人が選任されるか?

B    公益性

C    法人税制

D     NPO法人との住み分け→どういう人たちが公益社団法人になるか??

 

・既存の法人は、今後5年の間に一般の社団法人になるか公益社団法人になるかを選択しなければいけない→いずれを選択するか混乱している

 

制度改正により、以下の法人は今後どうなるか?

@スポーツ関係

・日本相撲協会:公益法人だが、莫大なお金が不透明に動いている現状

 →第三者機関から公益性を認定されるか?

・日本ボクシング協会:任意団体だが現状で認められるのか?

・日本プロ野球選手会:野球の普及などが業務だが、あまり活発でない←公益性??

   Cf労働組合日本プロ野球選手会も別に存在する

・社団法人○○ゴルフクラブ:社団法人だが、内容は民間のゴルフクラブと同じ

   →おそらく公益法人から落ちるのではないか

A同業者団体

・銀行協会:従来は行政の監視下におくために便利だったため社団法人だったが、本当に公益性あるのかが改めて議論される

・警備行協会:仲間内での利益目的の団体なら公共性認められないのではないか

B行政外郭団体

・交通安全協会:免許更新の通知をする ←公益性??

C少数者への支援

  超難病児支援協会のような団体

年間数例の難病児とその親を経済的に支援する

←特定少数の子供を対象としている点で公益性否定されてしまう可能性??保護の必要がある(目的の普遍性を重視したら公益性に問題は無い)

D営利事業者との競合団体

・高齢者移動サービス団体:タクシー団体との争いの中で公益性あると認められるか

E対立する公益間による競合申請

Ex.被害者支援団体と死刑廃止運動団体など

→どちらか一方だけに公益性があるというわけではないはず。このような問題に議論があること自体が公益であり、どちらか一方を排除するとしたら問題

F行政方針との対立団体

不法滞在者への人権支援団体:従来の法務省的な解釈だと公益性否定されるはず

こういう団体こそ人権保障の見地から認めるべき

G新規性のある目的の公益性

  今は公益性の価値判断が難しくても、時代の進展で公益性ありと認められることもある

ex.かつてのらい病患者支援団体

H異端の公益性

・地球防衛隊:宇宙からの侵略への啓発と防衛活動・・・←現実性の少ない目的の公益性?? 

 

最後に

・今回わかりやすさのために会社と対比したが、現実には営利の世界と非営利の世界の協会があいまいになっている(営利と非営利のボーダーレス化)

  株式会社の形態をとりながら公益的な事業

 Ex.グラミン銀行:貧困に窮する女性に貸付をすることで社会の底上げをはかる

  NPOの環境運動などに営利企業が参加(企業の社会責任の一環)

  コミュニティビジネスの台頭

・現行の会社法を詳細に見れば、利益配当をしない仕組みづくりも可能

・今後、社会貢献的な活動を目的に掲げる株式会社ができてもよいのでは?

 =利益を慈善事業に使うような会社があってもいいのでは?

・広い目で「法人制度」を見ていって欲しい

 

以上