104日 ロイヤリング議事録

講師:壇俊光先生

 

1 サイバー法とは:インターネットなど、デジタルがらみの法律だったら何でもあり

(1) 特徴

・デジタル分野の技術・産業の発展は日進月歩(判例時報よりは週刊アスキー)

→サイバー法の世界は先例のない世界、関連本が刊行されてもすぐ時代遅れ

・初めてであることを恐れない(自分がしたことが先例になる)

・結構知らないことがある→他の分野の方に敬意を払う

・プレゼン能力が必要(法廷でいかに技術をわかりやすく立証できるか等)

・情報処理試験は結構おもしろい

(2) 専門性

よくある弁護士の声「ITのことは解かれへんからなぁ〜」

・たしかに、基礎的な知識は必要 ex.ネットワーク、プログラミングの知識

・しかし単なる知識の問題ではなく、それを踏まえて問題を解決することが本質

・問題は、ITというだけで身構えて物事の本質を見ようとしないこと

  そもそも法律だけで解決できる問題ってどのくらいあるか?それぞれの分野で優秀な人々が活躍している中で、弁護士にはなにができるか?

  弁護士が取り扱ってるのは法律のごく一部にすぎない。

  専門性を身につける→弁護士のうぬぼれ?

→法律万能主義や弁護士村意識を捨てた法曹を目指して欲しい

 

2 サイバー法ではどのようなことが問題になるのか

 (1)・電子商取引 ex.ネットショッピングのクーリングオフ、ネットオークション

・迷惑メール ex.ネットネズミ講、ネットマルチ

・ネットの誹謗中傷 ex.2ちゃんねるのスレッドでの誹謗中傷

・情報漏洩 ex.ヤフーBB事件

・著作権 

・その他いろいろ

(2)法的措置

・プロバイダ責任法4条1項:権利侵害が明白で必要な場合、プロバイダは名誉既存を行った者(発信者)の身元等の情報を開示する義務

           IPアドレスの開示については仮処分を出してIPアドレス検索できる

・ドメイン差し押さえ?? ←結局2ちゃんねるのドメイン差押えはどうなった?

→海外ドメインの差押え:@差し押さえられるのは原則として債務者の財産

           (他人の財産は差し押さえるの難しい)

             A民事執行法167条の「その他の財産」の可能性大

              →ドメインって財産?

使用権とすると、結局は誰に使用を許してもらっているのか?

                 B民事執行の壁

・権利の移転に登記等を要するのものか?

→だとしたら差し押さえの効力は登記等がされたとき(民執1674項)

→どこに送ればいいんだ?

・管轄は、登記等の地(民執1672項)

→すると日本に管轄ないのか?

・海外のサーバは名義が債務者のであれば、条約があるので外国の執行手続きで差し押さえが可能

 

3 事件

(1) 不当請求 ex.アダルト情報、「逆援助」など

(2) 情報漏洩 

ヤフーBB事件

  電気通信事業者からの情報漏えい

  セキュリティの基本すら守れていない杜撰な管理体制

  前代未聞の多量の個人情報流出

争点:@リスクマネージメントの不備が過失にあたるか

     ・踏み台サーバを設置したこと

     ・現場隊アカウントの杜撰な管理

     ・サーバ管理者の退職による外部アクセスは容易に予想できたはず

Aヤフーは責任負うか

  ・被告は別のサーバであり、ソフトバンクBBが管理している情報について管理義務なしと主張 ←ヤフーの名前でやってるのに?!

B損害額について。また、郵便支払い通知書の引渡しは弁済か

 

     リスクマネージメントに対する理解

・リスク回避→情報を保持しない

・リスク減少→情報が漏洩しないように対策

・リスク移転→保険に入り損害をカバー

・リスク保持→損害を払ってしまう

法律家はあまりこのことを理解していない

→絶対に情報が漏洩しないシステムの依頼はあり得ない。

(3) 著作権

・チャップリン事件

争点:チャップリンの映画は実名著作か変名著作か

→旧著作権法上、保護期間に差

・放送会社とベンチャー企業の係争 ロクラク事件など、 

・クラブキャッツアイ事件

争点:スナックで、ジャスラックに無断でカラオケを設置し客に歌わせた行為が演奏権(著作権法22条)侵害になるか

   →間接侵害者を侵害行為の主体と認定して不法行為責任を認定

     要件:@間接侵害者による勧誘

A間接侵害者による侵害行為の場の提供

B間接侵害者の侵害行為に対する管理

C利益をあげるために積極的に利用する意図

・ファイルローグ事件

争点:市販の音楽CDからの違法コピーに利用できるファイル共有ソフトを開発・公開していた会社は著作権侵害の主体となるか

→著作権侵害の主体となりうるとした

判断基準:@行為の内容・性質

       A送信可能化状態に対する管理支配の程度

       B受ける利益

  Myuta事件

   ・イメージシティ社が携帯電話用のオンラインストレージを提供

   ・携帯ユーザは自分のPC・携帯からアクセスして音楽の保存・ダウンロードが可能

   ・サーバはID/PASSで他人がアクセスできないように管理している

争点:@)誰が複製の主体か cf.ファイルローグ事件の判断基準

     判断基準:@ ・目的

             →ユーザにCD等の楽曲を携帯で聴くことができるようにするもの

・行為の内容 

 →本件サーバは原告が所有し、その支配下に設置して管理

→サービスを利用するのに必要不可欠なソフトを作成して提供

→ソフトはサーバとネット回線を介して連動している状態においてサーバの認証を受けなければ作動しない

          A ・本件サーバの役割 

→設計されたシステムに従って上記目的を実現す

る以外ない

・ユーザの役割   

→複製行為は、もっぱら原告の管理下にあるサー

バにおいて行われる

B 有償性 →将来の予定で足りるとした

           ⇒以上より、複製主体をイメージシティ社とした

    A)公衆送信権を侵害してるか 

           ・複製の主体がサーバ管理者→ネットでダウンロードさせている者もサーバ管理者

           ・PC・携帯ユーザは所定の登録を済ませれば誰でも利用可

           ・「公衆」=不特定の者または特定多数の者(著作権法25項参照)→本件サーバを設置する原告にとってユーザは「公衆」

           ⇒以上より、公衆送信可能になるとした

      結論:@管理支配の程度:アプリケーション起動に関する認証サーバの管理支配性で足りるとした

←認証しなかったらどうなるの?という疑問

         A利益:将来に予定していることで足りるとした

←実質的に、利益は不要といったのと大差ない(これまでの基準から拡大)

         B公衆 ←ID・パスワードで管理している人は不特定でないはず

              複製の関係では管理支配性を重視して、公衆送信権では管理支配できていないとしたのは矛盾ではないか?

      そもそもの疑問点 ・カラオケ法理を用いてサーバの管理者を複製の主体と認定する傾向。しかし、そもそもカラオケ法理は直接の侵害者が違法な場合で、どのような場合に間接侵害を認めるかの話

               →私的複製の抗弁回避の理論として使われるように

・営利性は当初現実的な利益だけだったのが拡張された

→予定されているだけでよいとする判決

(4) サーバ・ホームページ提供者の刑事責任

・ポルノコンテンツ・児童ポルノ

・アルファネット事件

・アイコラ事件

     ・URL事件→URLで公然陳列?HDを設置したことと同じとはいえないのではないのか?

雑誌に載せたのと同じでは?

  Winny事件

    ・ファイル共有ソフトの開発者が著作権侵害の幇助に問われた

    ・最先端の技術に関する事件なのに前近代的な捜査手法

・裁判所の技術的な知識不足

・刑事事件における技術立証の困難さ

・刑法学者は著作権法を知ろうとせず、著作権法学者は刑法を知らない

・刑事処罰をちゃんと考えない立法

・法律家は技術の価値や将来のビジネスの可能性は考えない

・刑事裁判の現状→有罪判決の自動販売機

検察側の主張:@ウィニーはもっぱら著作権侵害を助長する技術

・徹底した匿名性→著作権侵害の摘発困難

・効率的な送受信→利用者を拡大させる

       A被告人は著作権侵害目的で開発した

  ・ウィニーの匿名性とは?                                                              

   →警察に捕まらないという意味では期待できない

   →技術を悪用して捕まっても技術者のせいにするな

・ウィニーの開発目的:著作権侵害蔓延目的ではない(書き込み等から明らか)

→しかし、地裁は幇助にあたるとした(罰金150万円)

 判決理由:@ネット上においてウィニー等のファイル共有ソフ

トを利用してやり取りがなされるファイルのうちかなりの部分が著作権の対象となるもので、

                 Aウィニーを含むファイル共有ソフトが著作権を侵害する態様で広く利用されており、

Bウィニーが社会においても著作権を侵害しても安

全なソフトだと取りざたされ、

C効率もよく便利な機能が備わっていたこともあって広く利用されていたという現実の利用状況の下、

D被告人はそのようなファイル共有ソフト、とりわけウィニーの現実の利用状況等を認識し、

E新しいビジネスモデルが生まれることも期待して、

Fウィニーが上記のような態様で利用されていることを認容しながら、ウィニー2の各バージョンをホームページ上に公開し、不特定多数の者が入手できるようにしたことが認められ、

Gこれによって正犯とされる人物がウィニーが匿名性に優れたファイル共有ソフトであると認識したことを一つの契機としつつ、公衆送信権侵害の各実行行為に及んだことが認められる

 

→判決の影響:技術開発に萎縮効果、グレーゾーンの自主規制

       →先端の技術開発が遅れてしまう!

 現在、双方控訴中

 

4 ファイル共有を巡る産業

(1) ファイル共有ソフトにより大量の電子データの流通が容易に

 →映画・音楽等のオンライン販売、クリエーターの活動が容易に

ネットワーク上の直接取引により低コスト・高パフォーマンスを実現

また、購買層の拡大

(2) 新しいビジネスの可能性 

ex.ウィニーの技術を利用して、テレビで放映されないPVをネットで公開

 

5 まとめ

 ・弁護士の枠にこだわっていては何もできない

 ・意外と、やってみたら自分が日本で最初だったということがある

 ・サイバー法に興味を持った人は「壇弁護士の事務室」(ブログ)をチェック

 

以上