【主旨】 東アジアの食・健康・環境を取り巻く問題は、ヒトの生命と生存を脅かすグローバル環境リスクである。特に中国は、世界最大規模の人口を誇り、急速な都市化、工業化、経済成長を遂げる一方、食の安全性の問題、生態環境の破壊、大気汚染そして健康被害などの課題に直面している。現代中国の政治的、経済的、社会的、文化的状況を俯瞰すれば、食・健康・環境問題の拡大抑止の可能性は十分に整っていたはずである。また、中国は日本の公害問題から学ぶこともできただろう。だが、諸問題に対する長期的、抜本的解決策が見いだせておらず、短絡的な対策の繰り返しにとどまっている。そこで、歴史・地域的視点にもとづく、多角的視点から長期的な予防、解決策を模索、人材育成へと発展させることが喫緊の課題となっている。また、日本と中国は食、経済、地理的に日中は緊密な関係がある。つまり、中国の食・健康・環境問題の改善・解決が、日中関係改善の可能性をも秘めていることを示唆している。 本セミナーの目的は、中国および日本から食・健康・環境にまつわる最新の動向や研究成果を報告いただき、研究上の進展、とりわけ文理融合プロジェクトの可能性を探ることにある。 とくに、以下の四つの問題を取り上げる。第一に、食品の健康に対する影響は、自然環境と人体の安全、およびそれを担保する社会システムに関わっており、具体的には、食品加工過程において残留農薬や食品添加物など化学物質からどのようなリスクを生じうるのかという問題である。第二に、化学物質に由来する食品と健康の問題は、社会システムとして、残留農薬や食品添加物などに対して、どのような法的規制や行政的関与が行われるのかという課題として具体化される。同時にそれは、化学物質の使用を抑制(ないし極小化)することによってリスクを回避しようとする取り組みを生むことになる(グリーン農業)。第三に、この問題を人体の健康と環境の問題から捉えなおすと、それは工場排水や生活排水の環境に対する負荷の問題にほかならない。環境法制と環境保全のための行政的基準が作成され、それらに依拠するモニタリングと実態分析が行われる。第四に、食・健康・環境にかかわるリスクはすべてがすでに科学的に解明されているわけではない。関連する法的・行政的整備は、このような限られた科学的知見にもとづいて行なわれることになるが、もしメディアがこの限定的な知見を「常識」と受けとめそれを社会に発信するならば、それは深刻な混乱を生みだしかねない。 以上のことから、「食・健康・環境」というわれわれが直面している21世紀課題群にとりくみ、有意な処方を構想しようとすれば、原理と応用を志向する文理各領域を架橋すること、アカデミズムと行政やメディアとの交流、そして課題を共有する東アジア各地域を跨ぐ対話が不可欠である。 〇日時:2015年11月3日(祝) 〇場所:大阪大学豊中キャンパス 理学研究科H棟セミナー室A(H701号室) 【プログラム】 <10:00-12:00> 〇陳芳(中国農業大学教授,食品安全科学):「中国食品安全の現状と加工過程における制御の進展」 (中国食品安全現状及加工過程控制進展) 〇李顕軍(中国農業部緑色食品管理弁公室,農学博士):「中国有機農業発展の現状と展望」(中国有機農業発展現状和展望) <13:30-15:30> 〇山本敦史(大阪市立環境科学研究所,調査研究課):「地方自治体における試験・研究:施策への貢献」 〇横内恵(大阪経済大学講師):「科学的不確実性を伴う環境リスクに対する法的制御の可能性と限界」 <16:00-17:30> 〇討論 【ディスカッサント】 〇中山竜一(大阪大学教授,法学研究科)/上須道徳(大阪大学特任准教授,環境イノベーションデザインセンター)/北川秀樹(龍谷大学教授,政策学部)/三好恵真子(大阪大学准教授,人間科学研究科) |
【主旨】 大阪大学総合図書館の貴重コレクション「石濵文庫」には,1940年代前半に満洲国で発行されたモンゴル語新聞『フフ・トグ(青旗)』が世界で唯一,ほぼ完全な形で所蔵されている。当時の文化・民族政策とメディアの関係,現在にいたる民族意識を知るための重要な資料として1990年代から再び注目されてきた。昨年(2014年)12月には,研究セミナー「戦前期モンゴル語新聞『フフ・トグ(青旗)』のデジタル化と公開の可能性」を開催し,この資料をめぐる研究の現状を知り,国際的な学術ネットワーク形成の可能性をさぐった。今回のワークショップでは,昨年の研究セミナーの成果の上に,紙面画像,多言語による目次データなどを統合したデータベース構築に向けた作業を報告する。データベースの構築に何が必要か,また公開によって今後どのような研究の展望が拓けるかを考えてみたい。 〇日時:2015年9月19日(土),13:00~18:00 〇場所:大阪大学豊中キャンパス,待兼山会館会議室[キャンパスマップ(80),(75)(76)の間の階段をのぼる] 【スケジュール】 〇報告:各30分,討論:90分,まとめ:30分 【プログラム】 〇バイカル(桜美林大学):『フフ・トグ(青旗)』研究における諸問題:データベース作成を中心として 〇周太平(中国・内モンゴル大学):内モンゴルにおける『フフ・トグ(青旗)』研究 〇相原佳之(東洋文庫):『フフ・トグ(青旗)』のデジタルブック作成をめぐる諸問題 〇堤一昭(大阪大学):『フフ・トグ(青旗)』ほか近代史資料の調査・整理の現状と公開にむけて 〇田中仁(大阪大学):『フフ・トグ(青旗)』データベース構築と公開をめぐる技術的・法的検討 |
【主旨】 急速な経済発展によりグローバル大国化した中国は,21世紀,東アジアのみならず国際政治における主要なファクターとして緊要な位置を占めつつある。このようななかで,日中正常化40周年にあたる2012年に生起した尖閣問題が,これまでの往来の拡大と深化によって育んできた相互の信頼・依存関係を棄損しかねないという点で,いま日中関係は転機を迎えている。国境問題とともに,「歴史認識問題」は,極めて重要ではあるが容易に処方を見出しえないデリケートで深刻な課題ある。このワークショップでは,日本・中国・台湾それぞれの立ち位置から,これまで行われてきた東アジア共同研究をふりかえりながら,東アジアの安定した環境をめざすマルチラテラルな方途を構想する。共同研究と歴史認識との関係性の検討をとおして,東アジア地域社会に通用する「歴史の語り」を獲得し,21世紀歴史学を展望するための条件を考えてみたい。 在全球化日益深入的21世纪,因经济高速增长而显现出大国倾向的中国,在东亚乃至整个国际政治中扮演着越来越重要的角色。在此背景下,中日之间于2012年邦交恢复40周年之际,因钓鱼岛问题再生嫌隙。中日双方长期以来通过广泛而深入地交往所培养起来的信任和相互依存关系,很可能因此遭受重创。由此来看,中日关系将迎来新的转折。与领土争端一样,“历史认识问题”也是至关重要但又极为棘手和敏感的重大课题。本工作坊的主旨是,分别从日本、中国大陆、台湾各自不同的视角,回顾以往东亚地区关于历史问题的共同研究及其成果的同时,为构筑东亚和谐稳定之环境寻求多方解决途径。具体而言,通过对共同研究与历史认识之间的关联性进行探讨,尝试获得能够通用于东亚地区的“历史叙述”,并以此为基础来展望21世纪历史学的发展前景。 〇日時:2015年1月31日(土),13:00-17:00 〇場所:大阪大学豊中キャンパス, 豊中総合学館4階L5教室 【パネラー】 〇坂元一哉(大阪大学):首相の靖国参拝と日中関係―何が議論を混乱させるのか 〇江沛(中国・南開大学/大阪大学):東アジア共同研究と歴史認識をいかに理解するか? 〇許育銘(台湾・東華大学/大阪大学):東アジア共同研究と台湾の歴史認識 【ディスカッサント】 〇秋田茂(大阪大学)/柳鏞泰(韓国・ソウル大学) |
【主旨】 本学の貴重資料である石濵文庫は,1940 年代に満洲国で発行されたモンゴル語新聞『フフ・トグ(青旗) 』を世界で唯一,ほぼ完全な形で所蔵している。当時の文化・民族 政策とメディアの関係のみならず,現在にいたる民族意識を知りうるものとして国際的に注目されている。資料の保存とデジタル化による公開・学術利用にむけて,中国 の内モンゴル大学モンゴル学院,東洋文庫などとの連携,学術ネットワーク構築の可能性をさぐる。 〇日時:2014年12月20日(土),13:00-18:00 〇場所:大阪大学豊中キャンパス, 豊中総合学館4階L5教室 【タイムテーブル】 報告① 13:00-14:30 〇堤一昭(大阪大学):石濱純太郎と石濵文庫:整理・調査・研究の現状 〇周太平(中国・内モンゴル大学/大阪大学):近年の内モンゴルにおける「満蒙」関係資料研究の現状 〇吉田豊子(京都産業大学):『蒋中正総統檔案』にみるモンゴル情報(1945~1949) 『フフ・トグ(青旗) 』の参観 14:30-15:30(大阪大学附属図書館) 報告② 15:30-16:30 〇内田孝(滋賀県立大学):モンゴル近現代文学研究からみた『フフ・トグ』紙 〇相原佳之(東洋文庫):東洋文庫所蔵の近代中国資料のデジタル化事業について 討論 16:30-18:00 |
標記の日中国際会議を,大阪大学未来研究イニシアティブ「21世紀課題群と中国」主催,大阪大学グローバルコラボレーションセンター・大阪大学未来研究イニシアティブ「MULTUMで切り拓くオンサイトマススペクトロメトリー」共催により,2014年10月24日(金)に大阪大学豊中キャンパス(大学会館・アセンブリーホール)にて開催します。 午前中の部:ポスターセッションでは,各種研究発表を募集します(主として大学院博士前期・後期課程の院生対象)。下記の要領にて,奮ってお申し込みください。多くのご参加をお待ちしております。 【研究内容】東アジアを含む世界の諸地域の健康・環境問題に関わる研究あるいは,それに関連する基礎研究・技術研究(各自の研究論文を主軸としたもの) 【申込締切】2014年9月30日(火) 【申込方法】発表者氏名,所属,タイトル,200字程度の概要を明記したものを,下記の宛先に電子メールでお申し込みください。申し込みをいただきましたら,受付確認のメール(ポスター番号の連絡)を送信します。 【申込先】大阪大学未来研究イニシアティブ「21世紀課題群と中国」事務局(大阪大学中国文化フォーラム事務局) c-forum#law.osaka-u.ac.jp #を@におきかえてください。 【参加・登録費】無料 【ポスター発表について】ポスターのパネルの大きさは横90cm×縦180cmです(ポスター掲示に必要なピン類は,主催側で用意します)。obligation time は,9:00-11:00です。 |
【主旨】 世界は,地球温暖化,資源枯渇や生態的多様性の喪失をはじめ,大気汚染,土壌汚染,ゴミによる水質・生活環境の汚染,砂漠化などさまざまな環境問題に直面している。環境問題には地域に限定したものもあるが,多くは地域を越えて影響を及ぼし,グローバル化している。21世紀の環境問題の主たる特徴は,グローバル環境リスクである。 しかし,グローバルな環境問題の拡大と環境問題を解決するための研究,実践,体制に大きな障害が存在し,環境問題の解決に向けての人類の知恵や優れた研究成果が十分に活かされているとは言えない。東アジアは環境問題のグローバル化が最も進んでいる地域であるにもかかわらず,国境を越えた取り組みは,国家制度,政治イデオロギーの問題,研究レベルの格差や研究体制の違いなどによって,深刻な停滞が生じていると言わざるを得ない。 例えば黄砂や大気汚染は,問題が議論され始めてかなりの時間が経過しているにも関わらず,却って事態は複雑化し深刻化の一途をたどっている。幾度も指摘されているように,東アジアでは政治イデオロギーの要因もあり,地域を横断した研究ネットワークの構築や,研究の新たな全体像を提示する枠組みが欠如している。とは言え,私たちはどの国に住もうが,どのような生活を送ろうとも,また何を研究しようが,生命健康の問題は,最も基本的な人権問題であるのみならず,地域の共通基盤を構築するための重要な指針である。 PM2.5など東アジアの大気汚染問題は,国境を越えて大きな注目を集めているにも関わらず,最も深刻な北京の健康被害状況や地域の取り組みが今日どのような状況にあるのかは,ほとんど知られていない。 今回のシンポジウムでは,長年,北京の健康被害について調査研究し,最前線で活躍する中国の研究者と大阪大学の文系・理系の研究者が一所に集い,専門領域やと国境を越えて,具体的取り組みや依拠するにたる情報やデータをもちより活発な議論を期待する。 主催:21世紀課題群と中国(大阪大学未来研究イニシアティブ) 共催:大阪大学グローバルコラボレーションセンター/MULTUMで切り拓くオンサイトマススペクトロメトリー(大阪大学未来研究イニシアティブ) 日時:2014年10月24日(金)
シンポジウム(13:00-18:00) 【モデレーター】 〇思沁夫(大阪大学・グローバルコラボレーションセンター・特任准教授) 【パネラー】(各30分,通訳を含め40分) 〇鄧芙蓉(北京大学・医学部公衆衛生学院・教授):北京市における大気汚染と健康被害 〇藤田宏志(環境省・水/大気環境局気環境課・課長補佐):大気汚染問題の歴史的推移及びクリーン・エア・アジアの現状と課題:日中の国内外におけるPM2.5問題と国際協力を中心に(仮題) 〇王小龍(中国農業大学・人文発展学院法律系・副教授):法律システムの構築から中国の未来に向けた環境対策を考えよう 〇松本充郎(大阪大学・国際公共政策研究科・准教授):日本における大気汚染問題への法的対応に関する一考察:四日市ぜん息からPM2.5問題へ 【ディスカッサント】(各10分) 〇豊田岐聡(大阪大学・理学研究科・教授)/〇上須道徳(大阪大学・環境イノベーションデザインセンター・特任准教授)/〇田口宏二朗(大阪大学・文学研究科・准教授) ポスター発表(9:00-11:00) ※ポスター搬入8:30,撤去18:00 〇姉崎正治(人間科学研究科DC)、山本高郁(工学研究科)、三好恵真子(人間科学研究科):世界の小規模金採掘(ASGM)の実態とZero Mercury化に向けての実践研究 〇三好恵真子(人間科学研究科)、胡毓瑜(人間科学研究科DC):脈波におけるカオス解析から判別する精神疾患患者の特徴及び中国における心理問題への応用展開の可能性 〇胡毓瑜(人間科学研究科DC)、三好恵真子(人間科学研究科):舟山群島新区海域における漁業資源の現状と海洋生態の保護・修復への展望:漁民の現行制度・生態に対する認識と意見に関する分析 〇岸本紗也加(工学研究科)、馬庭泰介(工学研究科MC):モンゴル・ウランバートルから語る大気汚染 〇川口奈穂(人間科学研究科MC):ゴラン高原におけるドルーズ教徒の生活空間とコミュニティのゆらぎ:境界に生きる人々 〇日下部龍介(在中国日本国大使館広報文化センター):中国北京市におけるソーシャルメディアを利用した健康観の形成過程 〇松村悠子(人間科学研究科DC):新エネルギー開発を活かした地域振興の実現に向けて:沖縄県宮古島の事例からの一考察 〇川原賢太(ほか5名)(工学研究科MC):Structuring the haze problems in Indonesia 〇古谷浩志(理学研究科)、紀本岳志(紀本電子工業)、豊田岐聡(理学研究科):謎のPM2.5大気汚染を探る:先端質量分析技術の挑戦 〇佐桑諒(人間科学研究科MC):原子力損害賠償制度の分析:古典的自由主義からの一考察 〇橘高彫斗(人間科学研究科DC):生命が共有し得る価値とは何か:ラスキンの固有価値論を基礎として 〇潘鈺林(人間科学研究科DC):中国蘭州市の大気汚染改善に関するフィールドワークからの分析評価 〇西川優花(人間科学研究科MC):イラン ザーヤンデルード川をめぐる水危機と人々の暮らし 〇高月(国際公共政策研究科MC):中国杭州市の水質汚濁問題の現状と課題 |
【場所】法学部本館一階(セミナー室B) 【時間】13:30-17:00 【報告】(報告時間15分,討論15分) 堤一昭(文学研究科):近代国民国家シンボルとしてのの君主/指導者図像の出現 福田州平(グローバルコラボレーションセンター):フィラデルフィア万博における日中の評価をめぐって 青野繁治(言語文化研究科):文学と歴史学のはざま―施蟄存「黄心大師」の波紋から影射史学まで 竹内俊隆(国際公共政策研究科):第4の戦場かそれともグローバル・コモンズか―宇宙空間の軍事的活用をめぐって 胡毓瑜[三好恵真子](人間科学研究科):脈波におけるカオス解析から判別する鬱病患者の特徴と実践への展望―中国における心理問題への応用展開の可能性 田中仁(法学研究科):1980年代における中共党史研究の再建と展開 |
2014年8月22-25日に鄭州大学で開催される国際セミナーで学術報告を行う若手研究者を書類選考により選抜して参加費用の一部を補助します。
課題:中国中原の歴史文化と東アジア,近現代中原地域の社会変容,近代化過程の中国社会,近現代の日中関係と両岸関係,その他関連する諸問題 ②報告テーマと報告要旨(日本語1200字程度で,主な論点・構成・資料などを説明するもの) ③紹介者(未来研究イニシアティブ「21世紀課題と中国」研究グループの教員) |