現代中国研究:大阪大学における研究・教育プラットホーム構築のための条件整備

市川国際奨学財団 国際教育・学術・文化助成金(2009年度)

研究組織

研究の目的

大阪大学中国文化フォーラムは,大阪大学において中国地域研究を専攻する学部生・大学院生と,教員および卒業後他大学や研究機関で研究活動に従事している方々との有機的連携を実現することによって,地域研究の一環としての現代中国研究の活性化とその深化を図ることを目的とする部局横断的なプラットホームである。

本研究は,大阪大学をその特質を活かしながらわが国における中国地域研究の開かれたひとつの拠点として定置することをめざして,緊要の課題に取りくむ。

第一に,大阪大学がとくに自然科学系に豊かな蓄積と資源を有していること,そして今日「中国」をめぐる諸問題がひと握りの中国専門家による調査・研究ではなく,さまざまな分野の研究者による総合的な交流の場を設定することが求められていること,の両者を接合できるような「場」を設定することである。

第二に,大学院生やポストドクター等の若手研究者に対して,相互研鑽の「場」を提供することである。その際,大阪大学という空間を閉鎖的に捉えるのではなく,関西から日本全体,さらに東アジアに向けて開かれたものとして設定されることが重要である。

第三に,学校間交流という国際交流のスタイルの有効性についてである。21世紀東アジアは地球上で最もダイナミックな展開を遂げている地域であり,経済・政治・社会などすべての領域で大きな変容を遂げつつある。その一方でこの地域は,経済格差や政治的分断など他地域とは異なる深刻な課題を抱えている。このような現実をふまえたとき,学校間交流という国際交流のスタイルは,東アジア内部の各地域の交流を推進し実体化するためのひとつの有効な手立てなのではないかと考える。

おりしも先般の日中韓首脳会議において大学間交流の促進についての合意がなされたが,中国地域研究を日本・中国・台湾さらに東アジア地域における大学間交流として展開していくことの意義については,具体的な取り組みを行いながら検討・吟味していかなければならないであろう。

研究計画の概要

本研究は,下記3点の研究を実施する。

第一に,来年度開設予定の大学院高度副プログラム「現代中国研究」で必修科目としているオムニバス講義「現代中国研究」に関わる予備研究を実施する。本講義は申請者(中国文化フォーラム)が想定する中国地域研究そのものの全体像を提示しようとするものである。この予備研究の成果はウェブ上で公開し,さらに講義資料として活用する。

第二に,2011年に中国で刊行する論文集(約50本,中国語)のなかの数篇を日本語訳し,大阪大学中国文化フォーラム・ディスカッションペーパーとして刊行する。その際,大学院生が翻訳にあたり,ポストドクター等が校閲にあたる。この翻訳論文には中国側若手研究者の論文をふくむこととし,若い世代の交流を促進する。

第三に,大学院生・若手研究者による研究セミナー「中国文化コロキアム」を開催する。このセミナーは2010年8月の石家荘での第4回国際シンポジウムに向けた準備報告会と位置づける。

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